業務自動化が注目されている理由をご存じでしょうか。また、DXと業務の自動化はどのような関係があるのか、業務自動化によってどう解決するのか、疑問を持ったことはないでしょうか。
DXはデジタル技術を活用して、新しい価値を生み出すことが目的です。企業の業績を伸ばして、優位性を上げるための手段として業務自動化があります。
労働者人口が不足するなかで、業務自動化が注目されています。現在の業務の無駄を洗い出し、いかに効率よく生産性を上げて業績を伸ばしていくかが大切でしょう。
この記事では、企業に求められているDXと業務自動化の関係性について解説します。デジタル技術の導入を検討しつつ、DXと業務自動化の関係性に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
DXと業務自動化の関係
DXと業務自動化の関係は、労働人口が減少する近年において、企業として生き残っていくためには切り離せない関係です。
デジタル技術やITツールをうまく使い、単純作業を自動処理できる環境や体制の構築づくりが必要です。この章では、DXや業務自動化の概要、2つの関係性について解説していきます。
DXとは
DX(ディーエックス)とは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略であり、デジタル技術によって、ビジネスや人々の生活の仕組みをよりよいものに変えることです。
私たちに身近なレンタルCDを例に取ると、これまでは店舗に行って、CDをレンタルする形のビジネスモデルでした。しかしデジタル技術の発達によって、現在はお店に行かなくても、インターネットでレンタルできる音楽配信サービスが主流となっています。
インターネットやスマートフォンなどのデジタル技術の進歩によって、店舗へ行かなくてもインターネット上で音楽が聴ける環境に変化しています。
このように、デジタル技術によって、ビジネスモデルや私たちの生活が大きく変化しているのが「DX」なのです。
業務自動化とは
業務自動化とは、デジタル技術やITツールを駆使し、いままで人が手作業で行っていた単純作業を自動化することです。
単純作業は、データ検索やエクセルなどの集計、簡単な入力作業などです。業務の自動化を進めることで、生産性が上がるだけでなく、作業者の負担も軽減できるでしょう。
業務自動化の背景としては、日本の生産労働人口が減少していることにあります。近年の働き方改革では、人手不足を補いながら生産効率を上げるために、さまざまなプランやツールが検討されています。
デジタルツールには、OCRやRPAといった技術がありますが、詳しくはこのあと解説していきます。
2つの関係性
DXと業務自動化における、2つの関係性は「目的」と「手段」になります。業務を自動化することがDX本来の目的ではありません。
RPAなどの業務自動化は、DXの目的を実現する手段のひとつに過ぎません。本来の目的は、デジタルの技術を活用して新しい価値を生み出すことであり、企業の業績や競争力を高めて、優位性を確立することです。
DXに役立つ代表的なデジタル技術
DXを進めていくうえで、代表的なデジタル技術を解説します。今の業務に取り入れそうなものはないか、確認してみましょう。
OCR
OCRとは「Optical Character Recognition」の略で、手書きまたは印刷の文字を、光学的に読み取るしくみのことです。
手書きの文字や印刷された文字を、スキャナなどの機械で文字を読み取って、パソコンが認識できる文字データに変換してくれる仕組みです。
OCRを活用することで、紙による手書き帳票などをデータ化できます。システムへの転記やデータ入力などの手作業を自動化でき、入力ミスや作業の効率化につながります。
RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、アナログ作業をデジタル化するツールです。これまで人の作業で行っていたデータ入力やデータ抽出、メールの送信などの定型作業を自動化することで、入力ミスや送信ミスが減り、大幅な効率化を目指せます。
現時点では、AIのような学習機能はまだなく、イレギュラーな要素には向いていません。OCRで紙帳票を読み取り、データ化し、RPAによるシステムへの入力作業を自動化する取り組みとして行われています。
ERP
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、企業の持つ人事管理や在庫管理、財務管理など、経営情報のデータベースを一元管理する仕組みです。
経営情報を一元管理することで、情報の整合性が保てます。また、リアルタイムに更新が行えることで、業務や企業全体の効率や最適化が行えます。
クラウド
クラウドとは「クラウド・コンピューティング」の略で、インターネットを通じて、サーバーなどのストレージやソフトウェアを利用する技術です。
インターネット環境があることが前提ですが、ネットワーク上でのソフトウェアの利用や、リアルタイムなデータの共有ができます。
サーバーの構築が不要で、簡単に導入することが可能なため、企業のシステムもクラウド上に構築することが増えています。
AI
AIとは「Artificial Intelligence」の略で、人工知能のことです。AIはデータを元に学習を繰り返すことで、コンピュータ自身で判断ができるようになります。学習したやり取りに応じて、適切な行動が取れるようになるためです。
チャットボットなど、問い合わせ業務を自動化する活用が増えています。質問を投げることで、その質問に応じた回答を返してくれるので、オペレーション業務の効率化に繋がります。
IoT
IoTは「Internet of Things」の略で、家電などの日常生活で使用するものにセンサー情報を組み込むことで、ネットワークを通してさまざまな情報が取得できます。センサー情報をデータ化し、分析を行い、使用状況や頻度などを可視化してくれます。
XR
XRとは「クロスリアリティ」の略で、現実世界と仮想空間を融合して、新しい体験ができる技術です。VRという仮想空間の体験や、ARという拡張現実で、現実世界と仮想空間を重ねて投影してみせる技術が挙げられます。
たとえば、カメラアプリなどで、現実の背景にCGキャラクターが出てくるのを見たことはないでしょうか。そういった技術もXRのひとつです。
今後はゲーム空間だけでなく、マウスやキーボードを使用せずに、ジャスチャーや音声で操作を行うなど、建設現場や手術などの医療の現場での活用が期待されています。
ARソリューションについて、こちらのページでも紹介しています。
業務自動化を行うメリット・デメリット
業務自動化を行ううえで、メリット・デメリットが存在します。メリット・デメリットをよく理解しておくことで、効率よくDXを進めていけるようになるでしょう。
メリット
まず、業務自動化のメリットを3つ紹介します。
・業務を効率化できる
・人為的なミスを防ぐことができる
・人件費が削減できる
業務自動化は、作業者の負担を減らせるのがメリットです。詳しく解説していきます。
業務を効率化できる
業務を自動化できれば、作業の効率化につながります。単純作業を自動化することで、力を入れるべき業務に傾注できます。
売上を上げる戦略を考えたり、商談につながる営業活動の時間を増やしたり、利益につながる活動に傾注できるでしょう。
人為的なミスを防ぐことができる
人が行う作業であれば、ミスは付きものです。しかし、作業を機械化できれば、人為的なミスを防止できます。業務品質の向上にもつながり、生産性が向上するでしょう。
ミスがなくなれば、ミスしたときの二度手間や、確認の工程がなくなるのもメリットといえます。
人件費が削減できる
業務の自動化につながるツールを採用するとなった場合、導入による初期費用はかかりますが、作業にかかる人員を削減することで費用の削減にもつながります。
これまで作業に時間がかかり、発生していた長時間の残業代や、作業に必要な人材の新規雇用がなくなるため、別の事業に予算を振り分けられるでしょう。
デメリット
続いて、デメリットを3つ紹介します。
・作業負担が増えることもある
・導入や運用にコストがかかる
・業務が停止するリスクがある
デメリットをよく理解しておくことで、効率よく自動化を進めることにつながるので、ぜひ確認しておきましょう。
作業負担が増えることもある
導入にあたって、作業に合わないツールを導入してしまった場合は、逆に作業の効率化を悪くする可能性があります。なぜなら、修正作業や確認作業に時間を取られてしまうためです。
業務の問題点や携わっているスタッフへのヒアリングを行い、業務に合ったツールを作る必要があります。また、誰でも扱えるように工夫するなど、導入前にしっかりと検討する必要もあるでしょう。
導入や運用にコストがかかる
業務を自動化するには、OCRやRPAなどのツールを導入する必要があります。ツールを使用するには、初期導入費用や月額費用、メンテナンス費用がかかることも考えておきましょう。
十分な比較検討を行い、トライアルで試すなどして、コストに見合うのかを検討する必要があります。コストが高額になると、費用対効果を実感できにくくなるため、注意が必要です。
業務が停止するリスクがある
人が携わらない自動化したツールなどは、業務内容を知る人が少なくなる場合があります。ツールに不具合が発生し、アナログで対応しなくてはいけなくなった場合に、業務の理解不足で誰も対応できないといった可能性もあります。
業務自動化を成功させるために必要な行程
業務自動化を成功させるためには、業務プロセスを可視化することが重要です。これまで言語化できていなかった問題点や改善点を洗い出すことで、正しい業務自動化につなげるためです。
業務プロセスの簡素化
業務を自動化するにあたって「作業に必要なデータが整理されていない」「申請書の書式が統一されていない」「〇〇さんしか詳しいことがわからない」「人によってやり方が違う」など、各工程の見直しや非効率な作業を取り除く必要があります。
業務フローなどで業務を可視化することで、生産性向上にも繋がります。まずは、業務上の無駄を洗い出し、簡略化に取り組んでみましょう。
業務プロセスの標準化
業務の簡素化ができれば、標準化をするために、業務のマニュアルを作成するとよいでしょう。手順やルールを標準化しておくことで、誰が担当しても業務へ取り組めるようになります。
ほかの作業者へも共有ができるようになり、担当者が異動や退職をした際も慌てずに済むでしょう。業務マニュアルも定期的に見直すことで、そのときに合った、無駄のない作業を行えるようになります。
業務プロセスの集中化
業務の簡素化・標準化をしたことで、効率的に業務が進められ、組織全体の生産性が向上しコストダウンにもつながります。注力したい業務に集中できるため、利益拡大につながる活動もできるでしょう。
業務プロセスの自動化
自動化に向けて、簡素化・標準化・集中化をきちんと行うことで、初めて取り組めるようになります。
いきなり自動化するのではなく、さまざまな無駄を削ぎ落とし、標準化することで、大きな成果を上げられるようになるでしょう。
業務自動化を実現させた成功事例
ここでは、製造業、金融業、医療業と、各カテゴリーで業務自動化を実現させた成功事例を紹介します。
製造業
沖電気工業株式会社は、一元管理が行えるEPRを実施しました。沖電気は各工場で異なる製品を生産していますが、図面の描き方や技術標準化がそれぞれ異なっていました。
共通する部品であっても、共通の仕様による生産が出来ていない状態でしたが、設計部門から出される図面などの各種設計情報を共有し、設計データを各工場で受け取れるようになりました。
また、各工場の特徴や製造に対する考えを把握、整理することで、技術などの共通化ができるよう改善されました。さらには、各拠点の強みを活かした生産体制の構築にも成功したようです。
金融業
株式会社三井住友フィナンシャルグループでは、AIを活用したオペレーターの照会対応におけるサポートツールの導入を実施しました。
顧客との質問・回答のやり取りを音声認識で機械へ学習させました。履歴を学習させることで、回答の候補のパターンが増え、回答精度が向上しました。
導入後は、照会1件あたりにかかるコストが60円削減となり、年間100万件にもおよぶ件数のコストの削減に成功しました。また、新人オペレーターの自己回答率も13%向上することに成功したようです。
医療業
信州大学医学部付属病院の財務会計連携システムへのRPA導入事例です。こちらでは、臨床現場からの発注から納品までを受発注管理システムにて管理しています。このデータに、新たに勘定科目を補完入力したうえで、さらに財務会計システムへ入力していました。
そこで、受発注システムから財務会計システムへRPAを起動連携させることで、システムの入力業務の二重化解消を成功させています。
さらに、転記のミスが減少し、財務会計システムへ正確な情報が記載されるようになりました。データの精度が向上したことで、通算1,447時間の削減に成功したようです。
まとめ
業務自動化は、導入自体が目的ではありません。DXはデジタル技術を活用して、企業の競争力を上げ、優位性を高めることが目的であり、業務自動化はそのための手段にすぎません。
労働人口が減っていくなか、デジタル技術をうまく取り入れることで、作業者の負担も軽減します。現在の業務の無駄をなくし、効率よく生産性を高めていくことが大切です。
業務自動化をすすめるうえで、マニュアル制作をお考えであれば、デジタル総合印刷株式会社をご活用ください。デジタル技術を活用して、複雑な作業の効率化をお手伝いいたします。