わかりやすい説明書の作成方法や、作成上の注意点にお悩みでしょうか。説明書には過不足ない情報を適切な表現で掲載する必要があり、ユーザーにとってわかりにくい点があると、説明書を大幅に改善する必要が出てくるでしょう。
そこで本記事では、わかりやすい説明書の作成方法や注意点について詳しく解説していきます。わかりやすい説明書を作成したい方は、ぜひ参考にしてください。
取扱説明書とは
取扱説明書とは、製品の操作方法・取り扱い方などについて説明するための文書です。利用者が製品を扱う前や利用中に、操作方法・エラーの解決方法を調べるために使用します。
パソコンやスマートフォンを使用する際、操作方法でわからない点が出てきたら、説明書を読む機会があるでしょう。ユーザーが製品を使用していて操作方法で悩んでしまったときに、疑問点を解消できるわかりやすい取扱説明書を作成しましょう。
取扱説明書と似た言葉の違い
取扱説明書と似た言葉に、マニュアルや手順書があります。ひとつずつ見ていきましょう。
マニュアルとの違い
「製品を利用する際に見る取扱説明書」と「業務をする際に確認するマニュアル」には違いがあります。取扱説明書とマニュアルの大きな違いは、対象としている閲覧者層です。
取扱説明書は、製品を利用するすべての人を対象として、利用方法をわかりやすく解説するのが重要です。製品の利用方法がわからない方にも理解して頂けるように、詳しく操作の説明・手順を示す必要があります。
いっぽうで、マニュアルはマニュアルを取り扱う方が業務に従事していて一定の知識を備えているのが前提です。基本的な内容は簡単な説明のみになっていて、専門用語を使用しているケースがあります。経験者のノウハウなども含まれていて、情報量が多いです。
手順書との違い
「取扱説明書」は、機械やソフトウェアの操作方法を図解にしたものです。作業のやり方が記載されている手順書とは違い、業務そのものを実現するための説明は含みません。製品の操作方法や、取り扱い方法のみ説明している特徴があります。
いっぽうの「手順書」は、作業を安定してこなせるように基準を示すのが目的です。業務のなかにある作業の具体的なやり方が記載されています。誰が作業をしたとしても同じ成果が出るように、ひとつひとつの作業が明確になっています。
取扱説明書の必要性
ユーザーが製品を使用する際に、誤った使い方をしないためにも取扱説明書は必要です。取扱説明書の必要性では、下記の内容を紹介します。
・トラブルの予防
・困ったときに読むユーザーが大半
ひとつずつ見ていきましょう。
トラブルの予防
製品を使用する際の事故やトラブルを防ぐために、ユーザーは取扱説明書を読む必要があります。たとえば、取扱説明書を読まずにコードレス掃除機を使用したために、火事を起こすなどのケースも考えられます。
取扱説明書には、電気製品の使い方以外にも製品を使用するときの注意点や、火災につながる内容ついて詳しく記載されています。
製品を使用したために起こりえる事故を防ぐためには、安全な使い方を伝えることが重要です。製品を使用する前に、取扱説明書を読む必要があるといえるでしょう。
困ったときに読むユーザーが大半
スマートフォンなどの家電製品では、操作をしながらある程度覚えられるため、約7割の方がまずは取扱説明書を読まないで使用します。しかし、スマートフォンを操作しているうちに操作方法で困ってしまう点が出てきて、取扱説明書を読むといったケースが多いです。
近年、家電製品には多くの機能が付いていて、普段はあまり使用しないものの便利だと感じる機能については、取扱説明書を読む方が多くなっています。このように、取扱説明書は、困ったときに読むユーザーが大半といえるでしょう。
取扱説明書に必要なPL法とは
PL法とは、製造物の欠陥から消費者保護・救済を目的として作られた法律です。製造業者の過失ではなく、製造物の欠陥や消費者保護に焦点が当てられています。
そのため、製造物の欠陥を原因として生命や身体に損害を被った場合、損害を被った原因が製造物の欠陥であると証明できれば、消費者は製造業者に損害賠償の請求ができます。
製造の過程・設計の段階で不備がなくても、取扱説明書の記述に不備があってはいけません。取扱説明書には、商品を安全に使用する方法や事故の予防策について書かれていなければ、製品欠陥の扱いを受け、PL法などの法律に抵触する可能性があります。
正しく利用するためにしなければならないこと、反対にやってはいけないことを明確に記載するとよいでしょう。たとえば、電気こたつの取扱説明書では「就寝時やその場を離れるときは電源を切り、電源プラグをコンセントから抜いておきましょう」と記載されています。
取扱説明書には、説明されなくてもわかる程度の内容でも、ユーザーが安全に使用するために記載しておくべきです。
また、製品の誤った使い方は、事故を未然に防ぐために明確に記載しましょう。警告・危険・注意の3つに分類し、マークで表記するとユーザーにわかりやすく、注意喚起になるでしょう。
わかりやすい取扱説明書の作り方
知りたい情報がすぐに見つかる、探しやすい取扱説明書にしましょう。ここでは、下記の内容を解説します。
・製品の仕様ごとに内容と構成を決める
・イラストや写真を使う
・操作手順と操作結果を明記する
・必要な情報をすぐに探せるようにする
・索引を作成する
・トラブルシューティングを作成する
ひとつずつ見ていきましょう。
製品の仕様ごとに内容と構成を決める
取扱説明書を作成する前に、全体的な構成と各項目に記載すべき内容を決めておくと、ユーザーが読みやすい流れで文章を作成できます。
たとえば主婦向けに炊飯器などの操作を説明するならば、実際に使用しているシーンを想定した内容にするとよいでしょう。また、文章だけではなく図解を用いて視覚的にわかりやすくすると、ユーザーが理解しやすい内容になります。
取扱説明書を作成する場合は、製品の仕様を理解して、読み手に誤解を与えないように仕上げるのが重要です。取扱説明書をどのような層に向けて作成するのか、どのようにゴールに導くのか考えて作成しましょう。
イラストや写真を使う
わかりやすい取扱説明書にするには、イラストや写真を使いましょう。忙しい方は、文章を隅から隅まで読む時間を惜しみがちです。傾向として、紙上を占める文字の割合が6割を越えると、ユーザーは読もうとしません。
文章ばかりの取扱説明書になってしまうと、製品の操作方法のイメージが湧きにくいため、どのように操作したらよいのかわかりません。イラストや写真を用いると、視覚的に理解しやすく、製品のどの部分を説明しているのか一目でわかりやすいです。
読むよりも見る側を意識して取扱説明書を作成するのがポイントです。ユーザーから理解を得られるような取扱説明書を作成しましょう。
操作手順と操作結果を明記する
わかりやすい取扱説明書にするには、操作手順と操作結果を明記しましょう。たとえば、炊飯器で予約をしてご飯を炊く場合、下記のように記載するとわかりやすい取扱説明書になります。
・メニューボタンを押して、メニューを選択
・予約ボタンを押して、予約を選択
・矢印ボタンで炊き上げたい時刻に設定
・最後に炊飯ボタンを押す
また、操作の正誤を明確にするとよいです。「ボタンを押してメロディ音が鳴れば炊飯が開始される」というように、ユーザー側で正しく操作できていると判断できる文章にしましょう。
必要な情報をすぐに探せるようにする
必要な情報をすぐに探せるよう、取扱説明書にも目次が必要です。目次が用意されていないと、該当ページにたどり着くまでに時間がかかってしまうでしょう。目次から必要な情報をすぐに探せれば、ユーザーは素早く製品の操作方法を確認できます。
たとえば、コピー機を操作する場合は「カラーコピーにしたい」「モノクロコピーにしたい」「FAXを送信したい」など、ユーザーが行いたい目的を整理して取扱説明書に記載しましょう。
また、カメラを用いて写真を撮影する場合は「暗いところでもきれいな写真を撮る方法」など、目的や利用シーンをイメージできるように記載するとよいです。ユーザーが必要な情報をすぐ探せるように、親切な取扱説明書を作成しましょう。
索引を作成する
書籍と同様に、取扱説明書も索引を作成しましょう。なぜなら、ユーザーは困っているときこそ必要な情報をすぐに探したいと考えるからです。
索引では、取扱説明書の最後のページに語句や単語を五十音順で並べて、該当する語句や単語が登場するページを記載します。
例
電源の入れ方 | P10、P15、P80、P100 |
電源の消し方 | P25、P50、P70 |
ユーザーが知りたい情報をすぐに見つけられるように、取扱説明書の牽引ページを充実させる必要があります。取扱説明書全体を網羅するために、索引ページは必ず作成しておきましょう。
トラブルシューティングを作成する
製品を使用していくなかで予想される、トラブルや解決方法を記載するようにしましょう。たとえば、テレビのような家電製品の取扱説明書には、異常が発生してしまった場合の解決方法が巻末に掲載されています
製品を使用するなかで不具合が発生すれば、ユーザーは故障を疑い、トラブルを解決したくなります。そのため取扱説明書には、発生しやすいトラブルと、予想されるエラー・よくある質問などをあらかじめ記載しておくと、ユーザー自身で不具合を解決しやすくなるでしょう。
通常の使用で起こりえるトラブルは、少しの情報を糸口に解決できる場合があります。こうしたトラブルシューティングを作成すると、カスタマーサポートへの問い合わせを減らせるメリットにもなるでしょう。
取扱説明書を作成する際の注意点
取扱説明書を作成する際の注意点は、下記の5つです。
・PL法を遵守する
・指示は1つの文章で最小限に留める
・回りくどい言い回しは避ける
・単純な言葉づかいを意識する
・トラブルシューティングは多すぎないようにする
ひとつずつ見ていきましょう。
PL法を遵守する
PL対策において、法の遵守が必要不可欠です。なぜなら、PL対応が不十分だとクレーム・訴訟に発展するおそれがあるからです。
以前、PL法の改正がありましたので、今後も法改正などが実施される可能性が考えられます。常に最新情報を確認して改正があった場合は、その都度新しいPL法を遵守したものに書き換える必要があるでしょう。
こうした取扱説明書作成においての決まりごとや、注意点を複雑に感じたときは、プロフェッショナルに依頼するのもひとつの選択肢です。
取扱説明書をはじめとしたマニュアル類の制作サポートについて、こちらをご覧ください。
指示は1つの文章で最小限に留める
取扱説明書を作成する際には、指示はひとつの文章で最小限に留めましょう。なぜなら、1文に多く情報が含まれてしまうと読みにくくなり、ユーザーに読まれなくなってしまうからです。
下記の2つの例文で、違いを見てみましょう。
例:カップラーメンの作り方
まず、お湯を沸かし、お湯を決められた線まで注いで、カップラーメンに記載されている時間を待ち、後から入れる液体スープがあればフタの上にのせて温めて、フタを開ければ完成 |
1.はじめにお湯を沸かす 2.お湯を決められた線まで注ぐ 3.カップラーメンに記載されている時間を待つ 4.後から入れる液体スープがあればフタの上にのせて温める 5.フタを開けて完成 |
1文に多く情報が含まれているよりも、1文にひとつの指示の方が読みやすいことがわかるでしょう。
取扱説明書は、いかに読みやすくてわかりやすい文章を作成できるかがポイントです。ひとつの文章にひとつの指示、または最小限に留めるとわかりやすいでしょう。
回りくどい言い回しは避ける
取扱説明書を作成する場合は、回りくどい言い回しは避けましょう。回りくどい言い回しで取扱説明書を記載すると、わかりづらく、ユーザーは自分が取るべき行動に迷ってしまいます。
たとえば、下記の文章を比較してみましょう。
「窓を開けていない部屋では使用しないでください」
「使用するときは窓を開けてください」
どちらがより、直感的な行動へつながるでしょうか。
このように、同じ内容について記載されていても伝わり方が違ってきます。回りくどい言い回しを避けるためには、下記のポイントを意識してみましょう。
・二重否定文は使わない
・同じ言葉を繰り返さない
・接続詞を多用しない
回りくどい言い回しは避けて、シンプルでわかりやすい文章にしましょう。
単純な言葉づかいを意識する
複雑な言葉を使用せず、単純な言葉づかいを意識して、取扱説明書を記載しましょう。製品の説明をしていくうえで、ユーザーに誤解を与える表現をしてはいけません。複雑な表現により製品の使い方を間違えて、破損やケガにつながるおそれがあります。
取扱説明書は、ユーザーの誤解を招かないようにする必要があり、単純な言葉づかいを意識して記載するとよいです。たとえば、下記の文章のように能動態で書きましょう。
「スイッチを押すと、電源が入ります」
製品を使用するユーザー目線に立って文章を作成していくのが、わかりやすい文章のコツです。
トラブルシューティングは多すぎないようにする
取扱説明書に記載するトラブルシューティングは、必要最低限にとどめた方がよいでしょう。なぜなら、トラブルシューティングの情報が多いと、それだけトラブルの多い製品とも考えられてしまうからです。
たとえば、スマートフォンの取扱説明書では「通信がすぐに切れる」「通信速度が遅くなる」などのQ&A形式で記載されています。通信速度が遅くなるなど、普段の使用で発生しやすいトラブル内容のみを記載するとよいです。
ユーザーの立場で解決が難しいトラブルに関しては、カスタマーサポートセンターへの問い合わせを促しましょう。ユーザーの立場で速やかに復帰できるようなトラブル以外は、詳細に記載する必要はないといえます。
まとめ
本記事では、わかりやすい説明書の作成方法・注意点について詳しく解説しました。製品欠陥の扱いを受けてPL法などの法律に抵触する可能性があるため、取扱説明書には商品を安全に使用する方法や、事故の予防策について記載する必要があります。
わかりやすい説明書にするには、イラストや写真を使用するとよいでしょう。また、文章だけではなく図解を用いて視覚的にわかりやすくすると、ユーザーが理解しやすい内容になります。
「指示は1つの文章で最小限に留める」「回りくどい言い回しは避ける」など、ユーザーに誤解を与えないような文章にするとよいです。ユーザーが製品を安全に利用できるように、わかりやすい取扱説明書を作成していきましょう。