マニュペディアマニュサポがお届けするお役立ちコラム、連載中

DXのためのデジタライゼーションとデジタイゼーションの違い

コピー

最近、よく「DX」という言葉を耳にすることはないでしょうか。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、IT技術導入のうえでは最終的段階を表す言葉です。DXに至るまでには、デジタイゼーションとデジタライゼーションを行う必要があります。

今回は、デジタイゼーション、デジタライゼーション、最後にDXの順で詳しく解説します。これからDXに取り組んでいこうと考えているなら、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

デジタライゼーションとデジタイゼーションの違い

デジタライゼーションとデジタイゼーションは、デジタル化という言葉を細分化した際に生じる言葉です。

両者とも言葉自体は非常に似ていますが、意味は少し異なります。ひとつずつ説明していきましょう。

デジタライゼーションとは

デジタライゼーションとは、既存の業務プロセスにIT技術を加え、変革させることです。具体例としては、より顧客管理機能に長けたレジの導入や、書類発行業務をロボットに委託することなどが挙げられます。

デジタライゼーションは、業務効率以外に、生産性向上のために活用されるケースが多いです。そのため、デジタイゼーションよりは導入のハードルは高いでしょう。

しかし、ハードルが高い分、導入には大きなメリットがあります。そのメリットとは、売上向上や新たな事業展開が見込めることです。たとえば、店舗を構えて販売していたものをECサイト上で販売することで、新規顧客や事業拡大が見込めるようになります。

デジタイゼーションとは

デジタイゼーションとは、アナログツールをデジタルツールへ切り替えることです。たとえば、これまで紙媒体で扱われていた書類の電子化や、FAXでのやりとりをメールに変換することなどが挙げられます。

導入する際の手間があまりかからないため、多くの企業で取り組まれています。業務効率の向上やコストの削減が、主な目的です。

デジタライゼーションとデジタイゼーションのメリット

デジタライゼーションとデジタイゼーションには、さまざまなメリットがあります。今回は、代表的なものを4つご紹介します。

人為的ミスの削減

1つ目のメリットは、人為的ミスの削減です。どうしても発生しがちなミスはシステム化しましょう。

たとえば、経理上、手作業で計算していたものの自動計算化や、自動入力機能の利用で、単純な誤字脱字も減るでしょう。デジタルの力で、より正確性に長けた仕事ができます。

業務効率の向上

2つ目のメリットは、業務効率の向上です。従来の手間が省け、生産性へも期待が持てるでしょう。

業務効率の向上につながる主な例としては、以下のとおりです。
● 容易に情報共有ができる
● オンラインツールの活用
● 情報管理が身軽になる

まず、容易な情報共有とは、業務上のプロセスや業務記録をデータベース化するということです。データベース化により、必要なときに必要な情報をすぐ入手できます。

次に、オンラインツールの活用とは、オンライン会議ツールの利用や、連絡時にチャットやメールを使うことです。そうすることで会議室に行く手間を省き、より都合のよいタイミングでの連絡が可能になります。

最後に、情報管理が身軽になるとは、主に書類管理に関係したことです。今まで紙の書類を管理する際は、ファイリングし、そのファイルを保存する場所が必要でした。

しかし、デジタル技術を使った管理に切り替えることで、パソコン内にすべて集約できるため、保管場所の確保が必要ありません。

書類のWeb化・電子化について、こちらの記事でも紹介しています。

コストの削減

3つ目のメリットは、コストの削減です。実際には、人件費や経費がコスト削減へ直結する主な費用です。人件費に関しては、前述したような業務効率化が進むことによる労働時間の短縮が見込めます。

また、経費に関しては、紙を使う場合をたとえると分かりやすいでしょう。媒体を紙からデータに変えることで、印刷する際のコピー用紙やインク、印刷代自体、さらには保存場所を削減できます。

新たな価値提供

4つ目のメリットは、新たな価値提供です。業務効率やコスト削減を実現できれば、余った時間やお金を新たな事業やサービス提供にまわせます。

また、余ったお金や時間を既存事業の質を向上させるために使うことも新たな価値提供となるでしょう。

デジタライゼーションとDXの違い

両者の違いは、ビジネス内のどの範囲まで変革させるかというところにあります。まず、デジタライゼーションとは、前述したとおり、既存の業務プロセスにIT技術を加え、変革させることです。

そして、DXとはデジタルトランスフォーメーションの略語です。定義としては、IT技術を活用してビジネスモデルを変革させ、競争上の優位性を高めることを意味します。

つまり、デジタライゼーションは業務プロセスを変革させるのに対し、DXはビジネスモデルまで変革させ、かつ競争上の優位性を高めるところまでが定義です。この変革させる範囲の差が、両者の違いとして表れています。

DXが進んでいない場合の取り組み方

DXを進めるためには、デジタイゼーションとデジタライゼーションという2つのステップを踏む必要があります。

今回は、デジタイゼーション・デジタライゼーション・DXの順番で事例や推進方法を説明していきます。

まずはデジタイゼーションの推進

DX化に向けてまず取り組むべきことは、デジタイゼーションの推進です。なぜなら、デジタイゼーションは、DX化の基礎となる部分であるためです。

では具体的にどう推進していけばよいのか、例を挙げながらご紹介します。

具体例

デジタイゼーションの具体例は、以下のとおりです。
● 書類のデータ化
● 印鑑の電子化
● 会議のオンライン化
● 広告のデジタル化

比較的費用が発生しにくい事例が多いため、導入もしやすいでしょう。

企業事例

企業では、具体的にどのようなデジタイゼーションを行っているのでしょうか。主な事例をご紹介します。
1. 契約や申請時の手続きをWeb上で完結できるようにする
2. イベント時の入場チケットを電子チケットにする
3. 採用活動のうち、序盤の面接をオンラインで行う

1に関しては、郵送や印刷の手間が省け、コスト削減につながります。また、誤字脱字などのヒューマンエラーも発生しにくくなるでしょう。

2に関しても、チケットを発行する手間や用紙自体を省けます。そして、デジタル手法はアナログ手法に比べて、セキュリティー強化にも効果的です。

3については、より効率的な採用活動が可能になります。特に採用される側にとっては、移動時間や交通費などを考慮せずに済むため、よりメリットが大きいでしょう。

推進方法

下記のようなステップを踏みながら、デジタイゼーションを推進しましょう。
1. 業務プロセスの全体像を把握する
2. デジタイゼーションが必要な部分をピックアップする
3. ピックアップした部分にどのようなツールやサービスを使うかを選定する
4. 担当者を決める
5. 効果測定を行う

ITリテラシーの観点から、既存の担当者のみでは対応が不十分だと判断した場合は、他部署から情報管理に詳しい社員を補充するなど、社内で協力してデジタイゼーションを推進することが大切です。また、効果測定を行った後は、原因究明と改善を繰り返しましょう。

次にデジタライゼーションの推進

デジタイゼーションの次は、デジタライゼーションを推進させましょう。同じように、例を用いてご紹介します。

具体例

デジタライゼーションの具体例は、主に以下のとおりです。
● RPA(Robotics Process Automation)の導入
● デジタル端末の導入
● IoT(Internet of Things)によるモニタリング機能の導入

RPAに関しては、書類作成などのバックオフィス業務で主に役立てられています。そのため、社員はよりクリエイティブな仕事に尽力でき、生産性の向上が見込めます。

IoTとは、カメラや車など本来ネット環境がなかったものにインターネットを接続させ、相互に情報交換できるようになる仕組みのことです。確認作業の正確性が人間より長けているので、業務の負担軽減へ大きな効果をもたらします。

上記3点の導入には、それなりにコストが発生する場合が多いため、慎重に実行していくことが大切です。

企業事例

デジタライゼーションは、大手企業を始め、多くの企業に広がりつつあります。一部の企業事例を紹介します。

1. トヨタ自動車:車の製造プロセスや事務仕事などにロボットを積極的に導入しました。生産性の向上や従業員の負担軽減などを目的としています。その結果、働きやすさに関するひとつの指標となっている「日経Smart Work大賞2021 」では大賞を受賞しています。
2. スターバックス:事前注文ができるアプリを開発しました。顧客側には待ち時間短縮、従業員側には店舗内の混雑緩和などのメリットをもたらしています。また、プリペイドカードへのオンラインチャージが可能になるなど、既存のものに関しても改革をおこないました。これらの取り組みはやがて功を奏し、Starbucks Rewardsの会員数が1年3か月の間で200%増加するという結果になりました。

推進方法

デジタライゼーションの推進方法は以下のとおりです。
1. 事業の現状を把握する
2. 課題点を見つける
3. 具体策を考える
4. デジタライゼーションを実行する
5. 効果測定を行う

1に関しては、プロセスや結果、顧客データなど、さまざまな要素を細分化する必要があります。また、担当している従業員側のITリテラシーなど、社内事情も踏まえて現状を把握しましょう。

2では、1で把握できた情報をもとに、課題点を見つけましょう。その際、最適な顧客体験を想像することが大切です。

3の段階では、デジタライゼーションの内容を決めていきます。対策として新規事業の立ち上げが有効なのか、それとも既存事業の発展を優先すべきかなど、方向性を定めましょう。その後、理想とする顧客体験などをもとにした企画を考え、担当部署やタスクを明確にします。

その後は4を実際に行い、5で実際の効果を分析しましょう。問題が見つかり次第、改善と再度実行を繰り返し、理想のデジタライゼーションへと近づけていきましょう。

最後にDXの推進

デジタライゼーションまで実行させたら、最後はDXを推進しましょう。DXは、より変革の規模が大きくなり、多くの費用や時間を要します。さまざまなDXの事例を確認しながら、自社が掲げる理想のDXへつなげていきましょう。

具体例

DXの主な具体例は、以下のとおりです。
● AIやロボットを活用した機器の開発
● クラウドや5Gの活用
● サイバーセキュリティの強化

デジタライゼーションと類似した点はありますが、DXは上記のデジタル技術によってもたらされる効果は、より大きなものとなります。具体的には、DXは市場拡大や新事業の立ち上げなどへ発展する効果をもたらします。

企業事例

DXの成功は、デジタイゼーションやデジタライゼーションよりも、企業や業界の色がより濃いものです。そのため、今回は業界ごとに成功事例を紹介します。

【物流業界】
日本郵政:DXの一環として、ドローンを郵送方法のひとつとして導入しました。具体的には、離島などのアクセスが比較的困難な場所や被災地への郵送へと役立てています。2018年に福島県内で実施されたドローンの配送は、日本初の試みです。

【保険・金融業】
ソニー損害保険:各保険加入者の運転スキルや運転傾向の把握がしきれず、事故リスクの算出が不十分であったことが課題でした。その課題の解決策として、AIを活用したスマホアプリ「GOOD DRIVE」を開発し、加入者の運転中の情報収集や分析に成功しました。

また、そのアプリ事業を発展させ、保険料のキャッシュバックを行えるサービスも開始しています。2020年には、上記の取り組みが評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。

推進方法

DXの実現は、中長期的なスパンで計画を立てることが重要です。具体的な推進方法は、以下のとおりです。
1. 事業の現状を把握し、課題点を導き出す
2. DXに向けた計画を策定する
3. DXへの体制を構築する
4. PDCAを繰り返す

1については、社内や顧客、そして政治などの国内事情など、あらゆる観点から課題点を導き出すことが大切です。

2に関しては、主軸となる「DXを通して実現させたいこと」をまず決定し、予算の取り決めも内容に含めます。また、他社の事例も意識して計画を策定しましょう。

3の段階では、もともと事業を担当している部署のみで行えるのか、もしくは、ITリテラシーを考慮した結果、他部署の社員も必要になるのかということを考慮しましょう。4では、効果測定を行いながら、DXの成功へと徐々につなげていきます。

まとめ

今回は、デジタライゼーションとデジタイゼーション、そしてDXについて解説しました。

DXを成功させるには、デジタライゼーションとデジタイゼーションの段階で解決できる問題にいかに取り組むかが重要なポイントとなります。段階を追うごとに計画期間も中長期的になり、原因究明と改善を繰り返す根気も必要となるでしょう。

もし、DX推進の過程で何か困ったことがあれば、プロの業者に相談することも有効な手段のひとつです。デジタル総合印刷株式会社では、今まで培ってきた印刷のノウハウとマーケティングや企画力を活かしたIT導入の提案を行っています。