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DXとは何か?必要な人材や技術例・企業事例をわかりやすく解説

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日常生活でも時代の変化を目まぐるしく感じるようになり、さまざまな聞き慣れない言葉を耳にするようになりました。

「DX」もそのうちのひとつで、職場でも会話に出てくる単語ですが「DXはなぜ必要なの?」「DXってどのように導入するの?」など、DXを推進するメリットや導入方法などがわからない方も多いでしょう。

本記事では、DXとは何かなど、基本のところから導入方法までわかりやすく解説しています。DXに取り組んだ企業事例も紹介していますので、参考にしてください。

DXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、デジタル技術を用いて生活をより豊かに変革することです。

DXは、2004年にスウェーデンのウメオ大学エリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で「ITの浸透が、人々の生活をよい方向に変化させる」という意味です。

本来はビジネス領域に限ったものではありませんが、現在は国を挙げて日本企業のDX推進に力を入れているため、ビジネス用語として浸透しています。

DXがもたらすものは単純な変化ではなく、根底から業界の技術を覆すような変革です。移動したい人と車の所有者をマッチングする「Uber」や、音楽コンテンツをシェアする「Spotify」などがあります。

大企業では、4割の企業がDX推進に取り組めているのに対して、中小企業は1割程度と低く、このままでは2025年を節目に日本企業がぶつかるであろう「2025年の壁」が大きな障害となるでしょう。

経済産業省が2018年に発表した、2025年に日本企業がぶつかると推測されているこの問題では、大きく3つの危惧が挙げられています。

・既存システムの老朽化で、データ量が増大し管理できなくなる
・システムを担う人材の高齢化による世代交代が必要
・技術の進化に対応できるIT人材の不足

問題への対策を怠ると、これからの環境やニーズの変化に対応できず、デジタル競争から弾かれてしまいます。デジタル競争にも闘っていけるように企業を変革するには、DXの導入が必須なのです。

DXを導入すると、次のようなメリットが得られます。
・生産性の向上
・変化する環境やニーズへの対応
・新しいビジネスへの移行

DXとは簡単にまとめると、デジタル技術を用いて根底から変革するような新しいビジネス形態を作ることです。DXの推進が、これから訪れる新しい時代においても、勝ち残っていく企業へと成長させます。

DX推進ガイドラインとは

DXを実現させるために、押さえておくべき事項を明確にさせ、取り組みをチェックできるようにガイドラインが設けられています。

経済産業省が2018年12月に発表したDX推進ガイドラインは「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築」の2つの要素で構成されています。

DX認定制度とは

DX認定制度とは、DX推進ガイドラインに対応し、DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する制度です。2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律」に基づいています。

認定を受けることによって、DX推進に対する企業の論点も整理され、国が認定企業と公開するため信用力も増すなどのメリットになります。

IT化との違いは

DXはよくIT化と混同されやすいですが、厳密には異なります。IT化とは、紙面などを用いたアナログ作業から、電子化させてペーパーレスにするなど、業務の効率化や生産性向上を目指すためのものです。

企業や組織そのものを変革するDXのひとつの手段に、IT化があります。DX推進にIT化は必須のプロセスのためイコールに考えられがちですが、IT化によってどのような変革が起きたかなど、結果まで求めるのがDXです。

DX実現のために活用されている技術例

DXを実現させるためには、さまざまな最新技術の取り込みが必要です。以下では、活用されている技術をご紹介しましょう。すでに生活にも取り入れられている、身近な技術ばかりです。

AI

AIとは「Artificial intelligence」の略で、人工知能とも呼ばれています。AIはメディアでも多数取り上げられているため、内容もよく知られていて、コンピューターが知能をもち、学習してさらに精度を上げていくのが特徴です。

身近なところでは、自動車の自動運転やお掃除ロボットはAIを搭載しています。さらに便利な機能として、Google翻訳やSiriのバーチャルアシストもAIです。

このように、AIは身のまわりでたくさん利用されており、なかには日常生活で欠かせなくなっているものまであります。

最近では、広告やニュース記事もAIを使用しての提供が主流です。従来は、誰がサイトやニュースを閲覧しても同じ内容でしたが、AIによって個人の好みを学習し、一人ひとりに合わせた内容の記事や広告をレコメンドされています。

5G

5Gは「第5世代移動通信システム」とも呼ばれており、スマホにも利用されているため馴染みがあります。高速・大容量の通信を実現させた4Gの魅力に加えて、低遅延・多数接続を実現させた通信です。

5Gでは、4K・8Kの迫力ある映像のライブ配信、臨場感を体験できるVR・ARなどが有名ですが、次に紹介するIoT化の加速も可能にしています。

IoT

IoTとはInternet of Thingsの略で、従来ではインターネット接続していなかったものに対応機器を取り付けることによって、インターネットを介して操作ができるようになる技術です。

日常生活が便利になる、車や家電製品などにもつけられています。スマホで操作できるスマート家電や、つけているだけで生体情報を計測できるウェアラブルデバイスなどもIoTの技術です。

ものがインターネットとつながるIoTと混同しがちなのが、ICTです。ICTは、情報伝達技術で、人とインターネットをつなぐ技術です。

たとえば、クラウドサービスやweb会議システムなどはICTが使われています。インターネットとの接続先がモノと人で異なるため、違いを把握しておきましょう。

ウェアラブル機能付きスマートグラス「BT-Work Remote」をご紹介します。

クラウド

クラウドとは、インターネットなどを介して、ITリソースやアプリケーションなどを利用できるサービスです。ハードウェアを購入したりソフトウェアをインストールしたりする必要がなく、サービスにアクセスして必要な分だけ利用できます。

GmailやGoogleスプレッドシートなどを使われている方は多いですが、これらはクラウドサービスにあたります。OutlookやBecky!などはパソコンにインストールしているため、クラウドサービスではありません。

クラウドは、インターネット環境さえあれば普段使用しているPCがなくても利用できるため、とても便利です。

DX実現のために必要な人材

DXを推進するには、先端IT人材の確保も重要で、以下のような職種の人材が必要です。しかし、日本の現状では、ITの人材不足が深刻化しています。

人材確保できない要因として挙げられるのは、教育支援などの取り組みを実施できてない企業が多い点です。さらに、DX人材の評価制度なども整備されていないなど、世界から見ても日本は大きく後れをとっています。

これから紹介するDX実現に必要な人材は、それぞれの専門的スキルに特化した知識や技術が必要です。しかし、ほかの業務内容の理解や連携が必要なため、幅広い思考力やコミュニケーション力も求められます。

プロデューサー

先導するリーダーの役割を担うのがプロデューサーです。DX実現に向けて企業全体を統括するポジションのため、自社の経営環境から問題点、発展に向けての戦略などを網羅しておく必要があります。

そのため、プロデューサーのポジションにつく人材は、管理職クラスや事業のエースが任命される場合が一般的です。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、プロデューサーが立てた戦略を具体的に企画・立案・推進などを担う人材です。プロデューサーとの密に連携するのはもちろん、ビジネスデザイナー自らも自社のビジネスについて理解しておく必要があります。

DXに必要な技術や知識に加えて、発想力や関係者をまとめる統率力、ファシリテーション能力が必要です。ビジネスデザイナーはリーダー気質の方が適しています。

UXデザイナー

UXデザイナーは、実際に使われるシステムやサービスの操作画面などをデザインする人材です。デザインといっても見た目だけでなく、使いやすさなどユーザー体験も当てはまります。

ユーザーが使いやすいと感じてくれて初めてシステムやサービスのよさが発揮できるため、要になるポジションです。UXデザイナーは、トレンドに合わせたデザインスキルが求められます。

アーキテクト

アーキテクトは、企画されたシステムやサービスを設計する人材です。設計や開発技術だけでなく、経営側視点で考えられる能力も求められます。

データサイエンティスト/AIエンジニア

データサイエンティスト/AIエンジニアは、AIやIoTなどのデジタル技術やデータ分析に精通した、専門的なスキルを求められる人材です。急速にAI技術が発展する現代では、最も求められる人材で、人材不足が問題視されています。

専門的なスキルや知識はもちろんですが、プロデューサーやビジネスデザイナーなど事業部側との連携も必須のため、ビジネスに対する理解度も必要です。

エンジニア/プログラマー

エンジニア/プログラマーは、アーキテクトが作った設計をシステムに実装したりインフラ構築をしたりする人材です。設計をもとにプログラミングし、動きのテストなどをします。

データサイエンティスト/AIエンジニアと同じく、高度な専門知識が求められますが、教育が追いつかず社内で人員確保するのが難しいのが現状です。外部に委託して人材を確保するケースも少なくありません。

DXに取り組んだ企業事例

近年、DX推進に取り組む企業は増えていますが、実際に変革プロセスを順調に進められている企業はまだ一部です。そのなかでも、DX推進の一定の成果が出ている企業の事例をご紹介します。看護・建設・金融業界など、幅広い業界が取り組んでいます。

日立製作所

日立製作所はIoTプラットフォームのLumada(ルマーダ)を導入して、顧客のデータとビジネスデータをつなぎ、複雑化する顧客の課題を解決する戦略を立案できるようになりました。

一社では解決が困難な課題も「Lumada Innovation Hub」でバーチャルとリアルの両方から人材を集め、知識やアイデアの共有が可能です。

さらに「Lumada Alliance Program」では、オープンイノベーションのコミュニティを提供し、社会課題の解決に向かって取り組んでいます。

清水建設

清水建設は、建物内の設備にIoTデバイスを導入する建物OS「DX-Core」を開発しました。アプリケーションとの連携で、セキュリティシステム・建物管理システム・IoTデバイスなどを顧客ニーズに合わせて実装できます。

具体的には、ビルの空調・照明・エレベーター自動ドア・監視カメラ・入退室カードリーダーなどの機器がスマホで制御が可能です。さらに、これからもDX-Coreと接続可能なハードウェアやアプリケーションを拡充する予定になっています。

三井住友銀行

三井住友銀行は、グループ全体で「最高の信頼を通じて、お客様・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」というビジョンを掲げています。このビジョンを達成するために、デジタル技術を活用してさまざまな取り組みをしています。

身近なものだと、ATMに行かなくても残高照会や振込などの取引がアプリ上で利用できる「SMBCダイレクト」があります。

さらに、キャッシュカード・クレジットカード・デビットカード・ポイント払いの4つの機能が備わり、保険・証券までひとつのアプリで管理できるサービス「Olive」が3月から開始しました。

ヤマハ発動機

オートバイやマリン製品で有名なヤマハ発動機ですが、2018年からDX推進に取り組んでおり、2020年からコネクテッド二輪車と専用アプリのグローバル展開を開始しています。

そして2021年6月には、経済産業省と東京証券取引所が共同で主催する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021」に選定されました。

具体的には、スマホのアプリでメーター表示機能を拡張させたり、メンテナンスタイミングをレコメンドしてくれたりなど、車両状況を確認できます。車両側でもスマホの通知を教えてくれたり、情報をアイコン表示してくれたりと、スマホと二輪車の連携が可能です。

大塚製薬

大塚製薬は、日本IBMとの共同会社「大塚デンタルヘルス」を設立し、患者さんへ最適なアプローチを支援するデータ分析ソリューション「MENTAT」を販売しています。

膨大な電子カルテの患者データから、必要な情報だけに整理し、医師や看護師などすべての医療従事者が過去の治療歴が一目でわかります。さらに、患者さんの気をつけるべきポイントも共有可能です。

まとめ

DX推進は、これからの新時代でも勝ち上がっていく企業であり続けるために、必要不可欠になります。

DXの導入を進めていくためには人員の教育を進め、DX実現に向けて、AIやIoTなどの技術の取り込みとプロデューサーやエンジニアなどの人材確保が必要です。

しかし、すべて社内の人員で進めるには、多大な時間と労力がかかります。2025年の壁に間に合わせるように取り組むには、外部のサービスを取り入れるのもひとつの方法です。

自社の人員の教育を進めつつ評価制度も整備し、足りない部分はサービスをうまく利用して企業の変革を実現し、2025年以降も成長し続けられる企業を目指しましょう。