どんな業界においても、会社ではマニュアルが作成されていることが多いでしょう。業務手順をマニュアル化しておくことで、誰が担当しても、同じ質の業務行すことができます。そのため、マニュアルは、どのような仕事においても必須のアイテムだといえます。
近年では、世界的にペーパーレス化が進められていることから、紙を使ったものではなく、電子マニュアルを導入する会社も増えています。今回は、紙マニュアルと電子マニュアルそれぞれの特徴、電子マニュアルの優れている点について、解説していきます。
目次
紙マニュアルのメリット・デメリット
それでは、まずは紙を使ったマニュアルのメリットとデメリットについて、みていきましょう。
メリット
未だ多くの会社で使われていることが多い、紙を使ったマニュアルですが、どのような点が優れているのでしょうか。
印刷すればどこでも閲覧できる
紙を使ったマニュアルでは、印刷さえしてしまえば、どこでも見ることができます。ネットワーク環境が整っていない場所や、電子機器を用意しなくてもマニュアルを確認できるのは、大きな利点だといえるでしょう。
ネットワークや機器のトラブルが生じた際に、影響を受けないという点もポイントです。
また、電子機器を使うのが苦手な人にとって、印刷しておけばいつでも使えるということは、よい点として挙げられるでしょう。どのような人でも扱えるというのは、紙ならではの利点といえます。
自由に書き込み付箋も貼りつけられる
紙を使ったマニュアルには、付箋の自由な貼り付けや、好きなように文字を書き込めるという利点があります。
人から教わった内容や、効率よく業務をするためのコツなど、直接的に書き込めるとより分かりやすいでしょう。重要なところには、マーカーなどで強調しておくことも可能です。
もちろん、電子機器のなかには書き込みができるものもありますが、そのようなものは高価な傾向があり、ネットワーク環境が整っていないと使えないケースが多いです。
それに対して、紙を使ったものであれば、環境を問わず、自分の好きなように使うことができます。
複数ページを同時に参照できる
何枚ものページを同時に見られるという点は、紙を使ったマニュアルならではの優れた点だといえるでしょう。
たとえば、電子マニュアル内で「電源の入れ方は7ページを参照してください」と記載されていた場合、いったん今見ているページから離れ、7ページに移動しないことには、先の作業に進むことができません。
一方、紙を使ったものでは、メインページを開きながら7ページを見ることができるため、内容確認がしやすくなります。このように、何枚かのページを見比べる必要があるときには、便利だと感じることが多いでしょう。
デメリット
何事にも、よい点とよくない点がつきものです。ここまでは、よい点についてみてきましたが、続いては、あまりよくないといわれる点についてみていきましょう。
印刷コストがかさむ
印刷費用がかかるということは、最大の短所といえるでしょう。枚数が多ければ多いほど費用がかかるため、社員の数が多い会社ほど、経費がかかることになります。
どの会社でも、経費は少しでも削減したいと思っていることでしょう。とくに、印刷費用の削減を考えている場合には、紙を使うよりも、電子マニュアルを作成することをおすすめします。
変更した場合は再配布の手間がかかる
マニュアルは、一度作成したら、永遠に使い続けられるというものではありません。業務の内容に変更が生じれば、当然マニュアルも変更しなければなりません。
その度に印刷し直していると、その分の費用がかかってしまいます。紙を使う場合には、印刷費用が常に発生するということを念頭に置いておく必要があります。
また、変更作業も非常に大変になるでしょう。全社員が目を通すものであるため、誤りがないように変更しなければなりません。読みやすさも重視されるため、手間や時間がかかる作業だといえます。
さらに、再び社員に配布し直す手間もかかってしまいます。社員の数が多い会社ほど、費用も手間もかかるということになるでしょう。
情報が膨大なほど検索しづらくなる
新しく業務を始めたばかりの人や、トラブルに対応する人は、マニュアルを使うことが多いでしょう。そんなときに、必要な情報がすぐに探せないのは、効率的ではありません。
電子化されていると、すぐに目的のページを検索することができますが、紙の場合はそうはいきません。一枚一枚ページをめくって、目的のページを探さなければなりません。目次はついていても、毎回、目的のページを見つけ出すのは一苦労です。
とくに、マニュアルのページ数が膨大な場合や、トラブルが生じて急いでいる場合には、煩わしさを感じるでしょう。
もはや、マニュアルで目的のページを探すよりも、ほかの社員に聞いたほうが早く解決するケースもあるでしょう。しかしそれでは、その社員の手間・時間がとられることになり、マニュアルの存在意義自体も危ぶまれてしまいます。
電子マニュアルのメリット・デメリット
近年、導入する会社も増えている電子マニュアルですが、どのようなよい点があるのでしょうか。また、メリットだけではなく、デメリットはあるのでしょうか。具体的にみていきましょう。
メリット
難しそうな印象が強い電子マニュアルですが、実はさまざまなよい点があります。詳しく解説していきましょう。
端末があればいつでも閲覧できる
電子機器などの端末さえ用意すれば、自宅でも外出先でも、いつでもマニュアルを見ることができます。
仮に紙を使ったマニュアルを持ち運ぶ場合、枚数が多ければ多いほど、移動するのが大変になります。しかし、電子化されていれば、移動も苦ではありません。テレワークや出張の際にも便利でしょう。
また、仮にデータを失くしてしまっても、コピーすればすぐに復旧できるのも、よい点のひとつとして挙げられます。
ほしい情報をすぐに見つけられる
知りたい情報は検索機能を使えば、すぐに見つけ出すことができるのも魅力のひとつではないでしょうか。とくに、新しい業務を始めたてのときや、トラブルの対応などでマニュアルを見る必要があるときには、目的の情報をすぐに探したいところでしょう。
紙を使ったものでは、目次から手作業で探さなければならず、知りたい情報を得るのに時間がかかってしまいますが、電子化されていれば素早く探し出すことができます。
常に最新の内容を配信できる
紙を使ったものでは、情報更新の際も社員の時間や手間がかかってしまいます。しかし電子化されていると、情報の上書きも簡単です。文章の変更はもちろんのこと、画像の追加・差し替えも容易いでしょう。
また、紙を使ったものとは異なり、印刷し直したものを改めて社員に配布する必要もありません。情報を更新したら配信するだけでよく、非常に効率的でしょう。
マニュアルの品質向上につながる
一度作成してから放置されているようなマニュアルは、品質が高いとはいえず、将来的には業務にも支障をきたしてしまうでしょう。
しかし、電子化されていると、常に新しい内容の情報に更新でき、こまめに修正することができるため、マニュアルの品質が向上します。それにより、結果的に質のよい業務にもつながります。
防犯面に優れている
紙を使ったマニュアルでは、どこかに置き忘れ、紛失してしまうリスクがあります。社内の大切な情報が社外に漏れてしまうため、取り返しがつかなくなることもあるでしょう。
一方、電子マニュアルでは、インターネット上のセキュリティによって守られているため、不正なアクセスをブロックすることができます。
また、一般的には、管理ツールは、特定の社員しかアクセスできないような設定や、パスワード設定をすることが可能です。さらには、閲覧履歴を残すようにすることも可能です。そのため、個人情報を扱う業務では、とくに適しているといえます。
社内では当たり前のように目にするマニュアルですが、とくにライバル会社には情報を知られたくないでしょう。防犯面に優れているということは、会社を守るうえで大きな利点となります。
さらに、定期的にバックアップをしておけば、災害や盗難でデータを失った際、手軽に復元できるという点もポイントが高いといえるでしょう。
デメリット
ここまで、よい点について解説してきましたが、よくない点はあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
端末がなければ閲覧できない
紙のものとは異なり、マニュアルを見るためには、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの電子機器が必要になるということがデメリットとして挙げられます。
さらに、電子機器が使える環境でなければなりません。機器の用意やネットワーク環境の整備も会社にとっては経費を使うことになるため、初期時点の負担は生じるでしょう。
また、私用の電子機器を使うのであれば、費用はかからなくて済みますが、防犯面での対策をしっかりと社員に教育しておく必要があります。
さらに、電子機器の扱いが苦手な社員にとっては、マニュアルを見るだけであっても負担が大きくなるでしょう。
複数ページの閲覧には向いていない
紙のものと異なり、何枚ものページを同時に見ることが難しいことも、よくない点のひとつとして挙げられます。
マニュアルのなかには「コントロールの仕方については9ページを参照」などのように、今見ているページからいったん離れなければならないことがあります。必要なページを並べて見ることができないため、不便に感じることがあるでしょう。
ただし、ツールによっては、クリックするだけで関連のページに飛べるものもあるため、マニュアルツール次第でクリアできる難点でもあります。
マニュアルが必要な理由を再認識
マニュアルを作ると「業務を効率化できる」「作業の品質を安定化できる」「新人社員への教育時間をカットできる」などの恩恵を受けることができます。
どんな仕事でも、大なり小なり、人によってやり方が異なるものです。そのため、基準を設けていないと判断に困り、指示を待つ必要が生じるなど、効率が悪い働き方になってしまいます。また、担当する人によって、作業の質が異なるという短所も挙げられます。
マニュアルがあることで、効率のよい働き方ができるうえ、誰が担当しても安定した品質を保証できます。とくに、新しい担当者への教育や引き継ぎにも活用できるため、社員の負担を減らすことにもつながります。
電子マニュアルの種類
ここまで、紙と電子のマニュアルそれぞれについて、メリットとデメリットを解説してきました。やはり利点が多い電子マニュアルですが、具体的にどのような種類のものがあるのでしょうか。
クラウドサービス
インターネットを使える環境下であれば、いつでもどこでも使うことができます。なかには、マニュアルを作るのに特化しているツールもあります。
そのようなものは、テンプレートが元々あるケースもあり、手軽に使い始めることができます。無料のお試し期間が設けられていることがあるため、実際に利用してみて、会社に合うかどうかを判断するとよいでしょう。
また、導入する際にサポートが付いているかどうかも、確認しておきましょう。導入時は、何から始めたらよいのか分からないことがあります。時間や手間がかかってしまい、業務に支障をきたしてしまうこともあるため、サポートが付いていると安心でしょう。
PDFを用いたマニュアルは、多くの会社で使われています。一度作成した後は、専用ソフトを用いなければ変更ができないようになっています。そのため、誤って誰かに内容を変更されてしまうということがありません。
また、PDFの形式は、印刷すれば紙マニュアルのようにも使うことができます。印刷して保管しておきたい場合にも、適しているでしょう。
さらに、検索・リンク機能や、サムネイル表示なども付いているため、読み進めやすいということも利点のひとつだといえます。
HTML
「Webマニュアル」とも呼ばれており、HTMLを使って作成されます。カーソルを合わせるだけで用語が説明されるなど、まるでWeb上で見ているかのような仕上がりになるのが特徴的です。
HTMLは自由に構成を変更することができるため、よりマニュアルを使いやすくするために、検索窓の設置や、メニューを固定化させることも可能です。
インターネットが使える環境であれば、いつでもどこでも見られるというのも、大きな利点のひとつでしょう。
電子書籍
電子機器を用いながらも、本のようにページをめくり、見開きすることができます。本を読む感覚で使えるため、ページ数が多いマニュアルでも、ストレスなく読み進められます。
さらに、検索・付箋の機能や拡大・縮小する機能もついています。見やすさや使い勝手についても、申し分ないといえるでしょう。
パソコンだけではなく、タブレットやスマートフォンでも見ることができます。電子機器に応じて、見やすく表示されるため、ストレスフリーに作業ができるでしょう。
電子マニュアルを作成する際のポイント
それでは、実際に電子マニュアルを作るときには、どのようなことに留意すればよいのでしょうか。押さえるべきポイントについて、分かりやすく解説していきます。
マニュアル作成時の書き方のコツは、こちらの記事で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
電子化する目的を明確にして社内で共有する
なぜ電子化するのか、まずは目的を明確にして、社内全体で共有しましょう。たとえば「印刷にかかる費用を削減するため」「マニュアルを現場や出張先でも確認できるようにするため」など、目的によって電子化のために必要なことが決まってくるでしょう。
ただ紙を使ったマニュアルを電子化するだけでは、かえって社員に混乱を生じさせるだけになる可能性があります。そのため、必ずこの手順を行いましょう。
どのマニュアルを電子化するか整理する
目的を明確にしたら、次は、社内のどのマニュアルを電子化するのか決めましょう。たとえば、マニュアル印刷にかかる費用削減が目的の場合は、社内の多くの部署で使われているマニュアルを電子化の対象にすると良いでしょう。
このように、対象となるものを回収し、電子化するために、社内のマニュアルを整理する必要があります。
使いやすさを大切にする
せっかく電子化するのであれば、使いやすさも重視したいところです。高度な機能があったとしても、デジタルに強くない社員には、使いこなすことが難しいでしょう。そのため、どんな人でも簡単に使い始められる種類のものを選択する必要があります。
クラウドで運用する
個人のパソコンでマニュアルデータを管理していると、誤送信や紛失のリスクがあります。また、マニュアルが最新の状態のものなのか、分からなくなる場合もあるでしょう。
このような事態を回避するために、クラウドで管理することをおすすめします。そうすることで、いつでも最新の状態のマニュアルを確認することができます。防犯面もしっかり管理されるため、安心です。
誰でも簡単に編集可能なツールを選ぶ
マニュアルは、一度作ったら終わりというわけではありません。作業に変更が生じ、最新の情報を加える必要があれば、その度に変更していかなければなりません。
そのため、誰でも簡単に編集できるものを選ぶ必要があります。たとえば、HTMLを使って編集するものでは、ある程度専門的な知識が必要になるため、誰でも編集できるというわけではありません。
特定の人にしか編集ができないとなると、一部の社員に負担がかかるうえ、スムーズなマニュアル更新ができなくなります。なるべく、シンプルな操作で運用できるものを選択しましょう。
まとめ
紙を使ったマニュアルと電子化されたマニュアル、どちらにもよい点があることを解説してきました。しかし、ペーパーレス化が進む時代のなかで、電子マニュアルの導入は、より多くの利点があるでしょう。
クラウドサービスやPDF、HTML、電子書籍など、電子マニュアルにはさまざまな種類があります。それぞれに特徴があるため、まずは何を目的として電子化するのかを社内で明確にしたうえで、適したものを選択しましょう。
さらに、使いやすさや、誰にでも簡単に編集ができるものを選択しておくと、マニュアルに変更が生じた際にもスムーズに対応することができます。
電子化するというと難しく聞こえがちですが、手順を踏まえればそれほど難しいものではありません。印刷にかかる費用を抑えたい・現場や出張先でもマニュアルを確認したいという場合には、電子マニュアルの導入を検討してみてはいかがでしょうか。