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業務をマニュアル化するメリット・デメリットは?

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インターネット社会の今、業務のマニュアル化を進める企業が増えています。しかし業務をマニュアル化しようと検討している方のなかには、IT関連の知識が乏しく、どこまでマニュアル化すべきかわからないと悩んでいる方がいるのではないでしょうか。

マニュアルを導入するときは、メリットだけではなくデメリットも把握しておくことが大切です。本記事では、業務をマニュアル化するメリットやデメリットをはじめ、マニュアル化に向いている業務、成功事例を紹介します。

業務をマニュアル化するメリット

業務の作業効率をアップしたい方は、マニュアル化を検討してみましょう。業務のマニュアル化をしようか迷っている方は、まずはどのようなメリットがあるか確認してください。

ここでは、業務をマニュアル化するメリットを6つ紹介します。

属人化を解消できる

マニュアルをもとに対応できる社員を増やすと、属人化を解消できます。メインとなる担当者がいなくても別のスタッフが対応できるので、特定のスタッフに頼りすぎることを避けられるでしょう。

また、業務内容を複数の社員が理解できるようになると、ミスや抜け漏れを見逃すリスクの軽減につながります。属人化の解消は人手不足問題の解決にもつながるので、まずは業務に追われている部署でのマニュアル化を検討してみましょう。

作業時間を短縮できる

業務のマニュアル化を行うと、作業途中でわからないところがあってもすぐにマニュアルで確認でき、作業時間を短縮できます。上司や先輩に聞く手間も省けるので、何度も同じことを聞きにくい方でも自力での解決が可能です。

また、マニュアル化によって作業時間を短縮できれば、余った時間に別の作業を行ったり、スキルアップのための時間として活用したりできます。残業の時間を減らせたら、早めに自宅に帰って自由時間の満喫も可能です。

業務品質を向上できる

マニュアルが手元にあれば、誰もが同じ手順で作業を行える環境が整います。マニュアルで一定ラインの品質を確保することで、業務品質の向上や保持が期待できるでしょう。

各作業にスタッフを配置する際、スキルを気にする必要もありません。マニュアルをもとにチームで見直しを行うと、よりミスや抜け漏れを避けられるでしょう。

教育コストを削減できる

マニュアルを活用すると、担当スタッフが付きっきりにならなくても新人教育ができます。マニュアルを見て予習や復習もできるので、新人社員が自ら率先して学ぶことも可能です。自発的に学んでもらえれば、結果的に教育コストを削減できます。

また上司や先輩に聞きづらいなど、コミュニケーション問題が生じる恐れがないでしょう。リモートワークが増えている今、マニュアルを利用した教育が欠かせないといっても過言ではありません。

定量調査を行いやすくなる

定量調査とは、商品やサービス、企業自体の認知度、購入率やリピート率、顧客満足度などのデータを集計して分析することです。業務のマニュアル化によって指針が定まれば、指標を打ち出しやすくなります。

定量調査の結果から、業務の改善点の明確化が可能です。業務のマニュアル化が完了したあとも、マニュアルや業務の工程に問題がないか管理する必要があります。

組織力の強化につながる

マニュアル導入により業務体制を整えることで、組織全体の強化につながる可能性が高まります。マニュアルを作成する際、あらためて業務内容を見直すきっかけにもなり、より業務改善や効率向上につながるでしょう。

組織力の強化を目的にマニュアルを導入する場合、仕事の重複がないか、人によって作業量が偏っていないか、手続きに手間がかかっていないか、などのポイントに着目してください。

また、上司や先輩に聞きづらいなどの問題を解決することで、社員の満足度向上にもつながります。組織全体の作業効率が上がるだけではなく、職場の雰囲気改善も可能です。

業務をマニュアル化するデメリット

業務をマニュアル化する際、メリットだけではなく、デメリットも把握しておきましょう。ここでは、業務をマニュアル化するデメリットを3つ紹介します。

柔軟な対応ができなくなる恐れがある

業務をマニュアル化すると、マニュアルにしたがって業務を進めることが目的となってしまいます。マニュアル以上のことができず、緊急でトラブルが起こっても臨機応変な対応が難しいです。

また自分から発想を展開しづらい、業務を改善したいという気持ちが起こりにくい、などの問題につながってしまいます。もともとある発想力を損なってしまう恐れがあるので、注意しましょう。

この問題を解決するには「マニュアルが絶対的である」という風潮を避けることが大切です。マニュアルは、業務をスムーズに進めるためのものであると認識してもらいましょう。

マニュアル作成や管理に手間がかかる

マニュアルの作成は、時間と労力がかかってしまいます。通常の業務とマニュアル作成を兼任しなくてはいけない場合、残業時間が増えたり、想定よりも作成期間が伸びたりする恐れがあるでしょう。

完成したマニュアルは、定期的に見直しを行い、改善を続ける必要があります。古いデータが残っていないか確認するために、見直しを行う都度番号や日付を記載して、版数を明らかにすることが大切です。

さらに、誰にでもわかりやすいマニュアルを作成するために、デザインスキルが要求されるケースがあります。どのようなデザインなら見やすいか、適切な文字の大きさがどれくらいか、などのポイントに着目しましょう。

モチベーションの低下につながる恐れがある

マニュアルの導入で作業効率は上がるものの、社員が考えて動く機会が減って、モチベーションの低下につながる恐れがあります。場合によっては臨機応変な対応が必要で、マニュアル化が裏目に出てしまうケースがあるので注意しましょう。

また、社員のモチベーションが低下すると、いくら良質なマニュアルを導入しても業務の質が上がらないケースがあります。

この問題を解決するには、社員から業務を改善するための意見を募ったり、マニュアル作成に携わってもらったりするとよいでしょう。

マニュアル化に向いている業務と向かない業務

マニュアル作成をしていく際、マニュアル化に適している業務とそうでない業務がある点について理解しておく必要があります。すべての作業内容をマニュアル化していくのではなく、マニュアル化に適した業務であるかを確認することが大切です。

ここでは、マニュアル化に向いている業務とそうでない業務を紹介します。

マニュアル化に向いている業務

どの業務からマニュアル化しようか、迷っている方がいるのではないでしょうか。まずは、マニュアル化に向いている業務から改善していきましょう。ここでは、マニュアル化に向いている業務を6つ紹介します。

システム・機器類の操作

システムや機器類の操作のマニュアルには、主に操作の手順ややり方を記載しましょう。新人社員が作業工程をひと通り覚えたいときや、次の操作方法がわからなくなったときなどで活用できます。

ただ操作の手順を記載するのではなく、機器が正常に動かない場合の対処法なども記載しておきましょう。

またテキストのみのマニュアルより、画像を用いて説明したほうがよりわかりやすいです。Web上で閲覧するタイプと紙媒体で閲覧するタイプに合わせて、文字の大きさや余白などに着目しましょう。

営業フロー

営業フローのマニュアルには、営業を行う際の流れやマナー、トラブル時の対応方法などを記載してください。マニュアルを導入すると、営業の品質の向上や維持、属人化の防止につながる可能性が高まるでしょう。

営業は、電話のほかに直接訪問して行う場合があります。出先でマニュアル内容を確認できるよう、Web上で確認できるマニュアルだけではなく、持ち運びが可能な冊子も用意することがおすすめです。

営業におけるマナーは、身だしなみや挨拶、商談時の会話、アプローチ方法などがあります。自社商品やサービスならではの特徴を箇条書きでまとめておくと、商談を開始する前に軽く目を通しやすくなるでしょう。

在庫・品質管理

在庫や品質管理のためのマニュアルには、在庫状況が変動したときの対応方法や、品質チェックの方法などを記載してください。

マニュアル化する際には、エクセルやバーコードでの管理ができるように、システム導入を検討するとよいでしょう。マニュアルとシステムのどちらも導入することで、人為的ミスを最小限に抑えられます。

労務・人事管理

労務や人事管理をマニュアル化する際、業務のタスクを細かく分けてから、どの作業をマニュアル化するのか決めましょう。

労務や人事の業務は、文書の作成、メール対応、発注や受注伝票の作成、各種台帳の管理、データ入力、請求書や見積書の作成、各種届出書類の作成などです。書類作成が主な業務となっているため、書類の作成手順や管理方法などをマニュアルに記載するとよいでしょう。

危機管理

危機管理マニュアルとは、業務を行ううえでリスクを防ぎ、被害を最小限に抑えるためのマニュアルを指します。

危機管理マニュアルを導入することで、どのようなリスクが起こり得るのか社員に理解してもらえます。企業の基本方針や、緊急時の対処法などをあらためて理解してもらえるでしょう。

マニュアルを作成するときは、最悪の状況を想定して対処法を考えることが大切です。「ミスは絶対起こらない」というマインドを捨てて、危機管理マニュアルを作成していきましょう。

カスタマーサポート

カスタマーサポートのマニュアルでは、ひとつの案件に対してステップごとの対応方法を明確にしてください。ステップごとに細かい指示があれば、ミスや抜け漏れを防ぎ業務の品質向上が期待できます。

また手元にマニュアルがあれば、どのように対応すべきか明確になるので、回答時間の短縮が可能です。スムーズに対応できれば、顧客満足度がアップする可能性も高まります。

マニュアル化に向かない業務

マニュアル化に向かない業務は、場合によって作業内容が異なったり、柔軟な対応が必要だったりするものです。接客業やクレーム対応など、人と接する業務はマニュアル化に向かないと考えておくとよいでしょう。

とはいえ、頻繁に臨機応変に対応しなければいけない業務でも、要点や注意点、緊急時の対処法、事例などをまとめておくことが大切です。

マニュアル化の成功事例

これから業務をマニュアル化していこうと考えている方は、実際にマニュアル化を導入している企業の成功事例を確認しましょう。成功事例をもとに、どのようなマニュアルを用意すればよいか参考にしてください。

ここでは、マニュアル化の成功事例を4つ紹介します。

無印良品

無印良品では、店舗の業務マニュアルにMUJIGRAMと業務基準書を導入しています。内容量は、MUJIGRAMが全13冊2,000ページ、業務基準書が6,600ページです。

MUJIGRAMは、新人教育で用いられており、新人社員にもわかりやすい内容が特徴です。全部で13冊あるMUJIGRAMですが、1冊目は「売り場に立つ前に」、2冊目は「レジ業務・経理」をテーマとしており、スキルアップに応じてマニュアルを読み進められます。

マニュアル化してからは、組織力の強化や売上向上を実現しています。マニュアルの見直しは年に4回行われており、問題点や改善点があればすぐに更新されるので、常に最新情報の共有が可能です。

しまむら

しまむらでは、改善提案制度の導入とともに業務をマニュアル化しています。

改善提案制度とは、マニュアルを常に新しいものにブラッシュアップし続けて、古い情報を取り除く仕組みです。社員から毎年50,000件以上の改善案を提案してもらっており、改善策の検討や実施を重ねたうえで、毎月更新が行われています。

マニュアルの内容量は、全数十巻の数千ページにわたり膨大です。ベテラン社員の働き方をマニュアルに反映しているので、新人社員でも入社わずかで一定レベル以上の業務ができるようになると考えられます。

また、マニュアルを基準に業務を行うことで、ローコストオペレーションの実現ができました。すべての部署で標準化と合理性の追求を重視しており、社員からは毎年20,000件以上の改善策が提案されています。

コニカミノルタ

コニカミノルタは、AiLingual(アイリンガル)というクラウドサービスの導入とともにマニュアル化しています。

AiLingualとは、マニュアルに特化したサービスであり、20か国以上の言語に翻訳が可能です。そのため、外国人社員がいる部署でもマニュアルを活用できます。

クラウドサービスを導入することで、新しいデータを追加するだけで自動更新が行われるので、データの取り扱いに対する不安を払拭できるでしょう。更新のたびにマニュアルを作り直す必要がないため、スムーズに最新情報を共有できます。

コニカミノルタのマニュアルは、セットアップの手順が確認できるもの、新人社員に業務の手順を説明するためのもの、顧客のためのユーザーマニュアルの3つです。3つのマニュアルを使いこなすことで、問い合わせ数の激減につながりました。

マニュアルをクラウド化して共有すると、用紙やPDFでのマニュアル作成にかかるコストや時間を削減できるでしょう。実際に、人手不足の問題解決が実現されています。

マクドナルド

マクドナルドは、マニュアル化された丁寧なサービス提供が特徴です。どの店舗でも安定したサービスを提供しており、業務の品質向上や維持が注目されています。

導入したマニュアルは、調理器具の位置や材料の分量などが記載されており、新人教育に欠かせません。調理器具は、一連のオペレーションをスムーズに行えるようなところに置かれており、なぜそこに調理器具があるのか意味合いから学べます。

また業務のマニュアル化とともに、ハンバーガーのソースが10gと決まっていれば、ワンアクションでソースを10g出せる装置などの開発が進んでいます。

まとめ

マニュアルを導入しようか検討している方は、どの業務をマニュアルすべきか決める必要があります。属人化の解消により業務品質の向上につながったり、作業時間を短縮できたりと、さまざまなメリットにつながるでしょう。

マニュアル化に向いている業務は、システムや機器などの操作手順、営業の流れ、労務や人事管理、危機管理などです。まずは、タスクオーバーや人手不足が課題となっている業務のマニュアル化を目指してください。

ただし、接客やクレーム対応などの人と関わる業務は、マニュアル化に向いていないので注意しましょう。とはいえ、緊急時の対処法や要点などをまとめておくことをおすすめします。

これからマニュアル化を考えている方は、本記事で紹介した実際に業務をマニュアル化した企業の成功事例をぜひ参考にしてください。