何かを説明する場合に必要になるマニュアルは、用途や業種、読者によって配慮すべきポイントが異なります。
ポイントを押さえずに作成してしまうと、結果的に何を伝えたいのかわからないものになるでしょう。
また、知識があることを前提に作成すれば、理解できる人が限られるマニュアルになってしまうおそれがあります。
本記事では、マニュアル作成時に気をつけるポイントについて、製品マニュアル、業務マニュアル、操作マニュアルの3種類にわけて、それぞれ解説しています。
マニュアル作成業務を任されてお悩みの方、もっとわかりやすいマニュアルを作成したいと考えている方は、この記事を参考にしてください。
目次
わかりやすい製品マニュアルを作るためのポイント
わかりやすい製品マニュアルとは、文章がシンプルで、何をすればよいのかがすぐに分かり、調べたいことがすぐに調べられるマニュアルです。
製品のマニュアルには、使用上の注意など命に関わるような、どうしても伝えなければならないメッセージもあります。
しかし、文章が長く冗長的だと、ユーザーは開いただけで読む気を失ってしまう傾向があるでしょう。
ユーザーに読んでもらえる、分かりやすいマニュアルを作成するためには、次のようなポイントを押さえて作成することが大切です。
製品の仕様に合った内容の記載
製品マニュアルを作成する場合は、製品の仕様に合った内容を記載することが大前提です。
ユーザーの手元にある製品と、説明書に記載している製品の仕様が異なっていると、ユーザーの混乱を招きます。
また、製品マニュアルは、製品の使い方やトラブルシューティング方法を提供するものです。
そのため、ユーザーが製品をスムーズに操作できるように、正確かつ分かりやすい説明で作成しましょう。
とくに、マニュアル全体の構成を意識しながら作成することで、全体をとおして読んだときに情報不足になったり、情報が重複したりすることを防げます。
項目ごとの読みやすさ、正確性も大切ですが、全体をとおして読んだときのバランスも意識しましょう。
さらに、製品マニュアルを作成する際には、製品を実際に使用して操作方法を確認します。
マニュアル作成者が製品の使い方や問題点を把握すれば、ユーザーが製品をスムーズに操作できるように、適切な説明を記載できます。
簡潔な表現
製品マニュアルにおいては、専門用語や難解な言葉を避け、簡潔で分かりやすい言葉を用いることが重要です。
これにより、ユーザーが製品の使用方法や機能について理解しやすくなります。
とくにマニュアルを作成する際は、作成者自身がその製品に詳しく知識が豊富なために、意識せず専門用語を使ってしまいがちです。
作成者にとっては簡単だと思える言葉が、一般のユーザーにとっても簡単だとは限りません。
また、文章の構成においても、シンプルでわかりやすい構成を心がけましょう。
段落を分け、見出しを使うことで、情報を整理し、読みやすくできます。
さらに、図や表を用いることで、視覚的にも理解しやすくなるでしょう。
操作手順の簡素化
製品の取扱説明は、1ページにまとめることが望ましいでしょう。
また、1ページ内に含まれる手順数は、4つ程度にとどめることが理想です。
操作手順の指示文言はひとつに限り、見開きで最大8つ程度の手順で完結するようにします。
もしひとつの操作に8つ以上の手順が必要であれば、ユーザーが何をすべきか操作を理解できない可能性があります。
そのため、操作手順を簡素化することは、技術開発においても重要な課題のひとつです。
操作手順が冗長である製品は、高品質の製品とは言えないでしょう。
マニュアル作成者は、製品の操作を行う最初のユーザーでもあるため、改善点を技術者にフィードバックすることが重要です。
索引ページの作成
製品マニュアルにおける索引ページは、非常に重要な役割を果たします。
たとえば、製品マニュアルには多数の操作手順や、機能に関する用語やキーワードが含まれているため、ユーザーは必要な情報を見つけるのに時間がかかるでしょう。
しかし索引ページを作成することで、ユーザーは必要な情報に迅速にアクセスできるようになります。
知りたいキーワードに関連する内容を調べたいのに、すぐにアクセスできなければ、ユーザーはマニュアルを閉じてしまうかもしれません。
閉じられてしまったがために、伝えなければならないことが伝わらず、結果として事故につながってしまってはいけません。
索引ページを設けて、検索性を高めることは、製品マニュアルを使う際のストレスを減らし、製品の使用に対する顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
トラブルシューティングページの作成
トラブルシューティングページとは、製品使用上で問題が発生したときの解決策がわかるページのことです。
製品を使ううえで、予期せぬエラーや不具合が発生することはよくあることです。
こういったときに、適切な解決策をユーザーに示すことが、製品マニュアルの大切な役割のひとつでもあります。
たとえば、まったく知見のない、使ったこともない製品を初めて使うとして、製品のディスプレイ上に見たことがないエラーコードが表示されたとしましょう。
製品のマニュアルを開き、エラーコードが書いてあるページを調べようとしますが、説明書のページ数が500ページあったとしたら、どう思うでしょうか?
そして、最初から最後まで500ページを確認した結果、エラーコードの記載がなかったとしたら、なんて不親切なマニュアルだろうと思うことでしょう。
こういった悲しい結末を避けるためにも、トラブルシューティングページの作成は必須といえます。
エラーコード一覧やQ&Aリストを記載するなどして、ユーザーがすぐにトラブルに対処できるようにしましょう。
わかりやすい業務マニュアルを作るためのポイント
業務の流れや方法を記載した業務マニュアルは、わかりやすいことはもちろん、新人からベテランまで誰が作業をしても同じ結果になるように、再現性の高いものでなければなりません。
わかりやすい業務マニュアルを作るためのポイントを押さえて、誰が見ても理解できるマニュアルを作成しましょう。
業務の目的とゴール
業務マニュアルを作成する際は、何のためのマニュアルで、誰が読むのかを明確にしておきましょう。
たとえば、研修内容を記載した新入社員のためのマニュアルと、発注業務の流れを記載した在庫管理担当者が読むマニュアルでは、使える用語や説明の粒度が異なります。
どの程度噛み砕いた説明をすればよいのかを明確にするためにも、誰が読むマニュアルで、何のためのマニュアルなのかを定めておいたほうがよいでしょう。
業務全体像の把握
業務マニュアルを作成するためには、作成者が関連する業務に精通していることが必要です。
業務にはそれぞれつながりがあり、特定の業務が終わらないと開始できないものや、順番が指定されている業務もあるでしょう。
こういった全体の関連を把握しないまま、業務マニュアルを作成しても、あとで手戻りが発生したり、不都合が生じたりする可能性もあります。
たとえば、勤怠の入力をする業務があるとします。
勤怠の入力は、端末にIDカードをかざさなければなりません。
しかしこうしたカードは、事前準備をせずにただかざすだけでは、使用できないでしょう。
IDカードを使うためには、人事部門で権限の付与が必要であり、その権限を付与してもらうためにはあらかじめ申請を提出しなければならない、といったように、他部署とのつながりがある可能性もあります。
このような場合に全体像を把握しておらず、カードをかざすとだけ記載しても、トラブルがあったときに解決できません。
業務の全体像を把握していれば、トラブルが発生した場合のQ&Aまで記載できるため、不要な問い合わせで時間を取られることを未然に防げます。
業務マニュアルを作成する際には、関連する業務の全体像を把握し、不安がある場合は業務の流れに詳しい人に見てもらうなどして、チェックしたほうがよいでしょう。
使いやすさ・見やすさ
業務マニュアルは、限られた時間のなかで読まれることが多いため、冗長な表現や言い回しを避け、簡潔にまとめることが大切です。
また、箇条書きやチェックリスト、図表を使用して、情報を整理し、わかりやすく伝える工夫を施しましょう。
とくにマニュアルの説明文は、結論を先に書き、読む人がすぐに知りたいことを把握できるようにしましょう。
業務マニュアルは、業務中の限られた時間のなかで閲覧するものです。
補足的な情報は、必要に応じて見返せばよく、見返す必要があるかどうかは各々で判断します。
そのため、まずは結論を最初に書き、限られた時間内ですぐに内容を把握できるように書きましょう。
また、新人からベテランまで読む可能性がある文書で、専門用語を使う必要がある場合は注釈を設けるなど、各自で調べる必要がないようにしておくと読む時間を節約できます。
さらに、業務マニュアルは長大な文書になることが多く、読む人がすぐに必要な情報にアクセスできない場合があります。
そのため、目次を作成し、章や項目ごとに分類して掲載することで、読む人が必要な情報に迅速にアクセスできます。
また、業務マニュアルには、多くのページや項目があるため、統一されたフォーマットを使用することで、読む人が情報を見つけやすくなります。
たとえば、見出しのフォントやサイズ、箇条書きのスタイルなどを統一することで、マニュアル全体の一貫性を確保できます。
ほかの文書やウェブサイトへのリンクや参照が含まれる場合は、これらのリンクや参照先を示すことで、必要な情報へより早くアクセスできます。
修正・更新作業の行いやすさ
業務マニュアルに記載している事項は、永久に同じとは限りません。
たとえば、基幹システムを使った業務についてのマニュアルだった場合、基幹システムをバージョンアップすることで操作が変わってしまう可能性もあります。
こういった場合に対処するために、業務マニュアルには、誰が・いつ作成したもので・いつ時点の情報なのかを明記しておきましょう。
作成に関する情報が記載されていないと、業務マニュアルに記載されている情報が、いつ時点のものなのかわかりません。
最悪の場合は、最初からすべて変更点を確認しなおす作業が生じるほか、疑問点があっても作成者がわからないため、問い合わせできないといった事態が発生します。
作成者、日時、変更点、変更履歴などを記載することで、不明点があれば、その時点のマニュアルを作成者に確認でき、手順が変わっても簡単に修正を行えます。
わかりやすい操作マニュアルを作るためのポイント
操作マニュアルを作成する場合にも、製品マニュアルや業務マニュアルと違ったポイントがあります。
マニュアルごとに押さえなければならないポイントを把握することで、誰が見ても分かりやすいマニュアルを作成できます。
また、マニュアル作成に使用するツールやサービスの選定も重要です。
使用ツールの作りが不親切だと、マニュアル作成者の負担が増えるばかりか、できあがったマニュアルの完成度も大きく左右されるでしょう。
印刷会社のノウハウによって生まれた「マニュサポ」は、こちらでご紹介しています。
操作目的の記載
操作マニュアルには、操作の手順や方法を記載するだけでなく、その操作が何のために行われるのか、どのような目的があるのかを明確にすることが重要です。
ユーザーは、操作マニュアルに記載された手順や方法を読んでも、その操作の目的や意図が分からなければ、なぜその操作を行う必要があるのか理解できません。
操作目的を記載することで、ユーザーが操作の意図を理解しやすくなります。
また、操作マニュアルに記載された手順や方法を正しく理解していない場合、誤操作が発生する可能性があります。
しかし、操作目的が明確になっていれば、ユーザーはどのような結果を期待すべきかを理解し、誤操作を防止できるでしょう。
さらに、操作目的が明確であれば、操作マニュアルを読むユーザーが自らの業務において、どのような場面で操作を行うべきかを理解しやすくなります。
そのため、目的を達成するために必要な操作を適切に実行できる可能性が高くなります。
詳細な操作説明
操作マニュアルには、必要なツールや機器を明確に説明したほうが親切です。
それらをどのように使うかについても詳細に記載しましょう。
たとえば、ある操作で特定のソフトウェアを使用する場合、そのソフトウェアのインストール方法や、基本的な使い方を説明しましょう。
また、操作手順については、とくに詳細な説明が必要です。
具体的には、どのボタンを押すか、どの画面を表示するか、どの順番で操作を行うか、などの細かな情報を記載することが重要です。
加えて、操作の過程で表示される画面の説明や、入力すべき内容の例なども記載すると、ユーザーが操作を行ううえでの手順が明確になります。
注意事項や疑問点の記載
操作マニュアルには、操作中にエラーが発生した場合の対処法も記載する必要があります。
具体的には、エラーメッセージが表示された場合の対応方法や、エラーが発生した場合起こりえる状況を説明し、疑問点を解消できるようにしておきましょう。
また、そのページで疑問点が解消できない場合は、どこに問い合わせたらよいのかも記載しておくと親切です。
こういった疑問への解決方法や、問い合わせ先の記載がないと、ユーザーは問題がマニュアルだけで解決できなかった場合に対処法がわからず、マニュアルだけでなく製品に対しても不信感を抱くおそれもあります。
図や画像などの挿入
複雑な操作を行う場合や、具体的なイメージが必要な場合には、図や画像を挿入することによってユーザーの理解度を高め、操作内容をより具体的に理解しやすくできます。
操作マニュアルで説明する画面の構成や、画面操作の手順を説明する場合には、その画面のスクリーンショットを挿入するとよいでしょう。
スクリーンショットの挿入によって、ユーザーがどの画面で操作を行うか理解しやすくなります。
また、画像には必要な説明をつけましょう。
たとえば、図に番号を付加しておけば、説明文のなかで番号を示すことで、ユーザーはどの画像を確認すればよいのかわかりやすくなります。
さらに、図や画像を挿入する際には、適切なサイズや位置に配置することも大切です。
パネルの操作手順などを説明する場合は、画面遷移のフローチャートを挿入するとよいでしょう。
フローチャートがあることで、現在の操作は全体のなかでどの部分にあたるのか判断できます。
操作結果の記載
操作マニュアルを作成する際には、操作結果の記載も重要です。
操作結果とは、操作を行った結果として表示される画面や、出力されるデータなどのことを指します。
操作結果を記載することによって、ユーザーは操作を正しく行えたか確認できます。
また、操作結果の記載は、不具合の原因を特定するためにも役立ちます。
操作を行った結果として表示される画面については、その内容を詳細に記載します。
具体的には、表示される情報や、表示される項目名、表示される値などを記載しましょう。
操作を行った結果として、何らかのデータが出力される場合には、そのデータの内容についても記載します。
たとえば、ファイルの出力先や、出力されるファイルの形式や内容についても記載しておくと親切です
操作が失敗した場合には、エラーメッセージが表示されることがあります。
その場合には、エラーメッセージの内容や、どのような原因が考えられるかなどを記載することで、ユーザーの混乱を軽減できます。
まとめ
本記事では、製品マニュアル、操作マニュアル、業務マニュアルそれぞれの作成時の注意点や、わかりやすくするためのポイントをご紹介しました。
マニュアルの特性やマニュアルの対象読者が異なるため、押さえるべきポイントもそれぞれ違います。
どのマニュアルを作成する場合も、冗長表現を控え、シンプルに表現するという点が大切といえるでしょう。
そのうえで、マニュアルを読むユーザーの目線に立ち、見やすく、調べやすいマニュアルを作成することを意識しましょう。
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