我々がサービス展開しているマニュサポ(Manufacturing Supporter)は、3つの印刷会社から成り立っています。3社それぞれが長くマニュアルに携わってきた歴史がありますが、各社が持つ特徴や強みは異なっています。
第2弾で取り上げるのは、デジタル総合印刷株式会社について。真生印刷が聞き手となり、デジタル総合印刷の特徴についてご紹介していきます。
デジタル総合印刷株式会社 営業 世古 ✕ 真生印刷株式会社 アートディレクター 河野
「デジタル」と「印刷」の二つの柱を持つ強み
河野:まずは、デジタル総合印刷という会社名からお伺いします。「デジタル」と「印刷」両方の名前を持たれているという点について教えていただけますか?
世古:デジタル総合印刷株式会社の創業は1952年です。社名に「デジタル」と「印刷」という2つの要素が入っている通り、創業時からの印刷事業で培ったノウハウを生かして、印刷用のデータ作成のみならず、データベースシステム、WEBシステムなどBtoB向けの受託システム開発を行う事で、お客様の情報資産のマルチユースを活性化させるためのデジタル化事業に90年代から注力しています。
先代のオーナーがパソコン分野・デジタル分野への投資を1980年代から始めて、今の開発事業の興りとして、1982年に電算写植システム、汎用コンピュータシステムを導入して、当時としては同業他社に先駆けて、印刷業務のデジタル化を推進してきたというのがデジタル事業のスタートです。
河野:デジタル総合印刷の特徴の一つは津山事業所がある点かと思いますが、テクノアーツ津山の役割をお聞かせください。
世古:テクノアーツ津山は先代のオーナーの故郷で、経緯としては地元に錦を飾るではないですが、自分の故郷に仕事を創出したいという先代の思いでスタートしました。津山は酪農や地元の地場の仕事が非常に多く、今でも津山周辺では当社が手掛けるようなデジタル事業ができる会社は少ないです。
大阪・東京では優秀なSEやオペレーターの確保が難しいのに対して、津山では毎年優秀なスタッフを確保できています。DTPをしたことがないけれどもパソコンに関わる仕事がしたいという思いをもった学生さんが、高専以外の地元の学校からも就職してくれています。津山では定期的に地元貢献の一環として、地元のお子様などをお招きしてVRの体験会なども行っているのですが、そういった地元貢献の活動も事業運営にいい効果がでていると思っています。
河野:創業時から今に至るまで様々な変化があったと思うのですが、手掛けられてきた印刷物や制作物の種類についてどういった特徴がありますか?
世古:大阪拠点では古くから製造メーカー様の取扱説明書や技術資料の受注が多く、これは現在にもつながる強みとなっています。一方で東京営業所については生命保険関係の約款の印刷が受注の中心でした。これはテクノアーツ津山の汎用機を活かしたグラフの作成や、80年代90年代当時、いち早くデジタルを活用して約款の制作を手掛けていたことが評価していただけたのだと思います。
河野:さきほど社名に触れてお話を伺いましたが、実はデジタル総合印刷は、今現在は印刷機を持っていませんよね。それでもなお、社名に印刷という要素を入れているところはどういった思いがあるのでしょうか?
世古:デジタルと印刷の2軸が大きな強みであることは間違いないので、そういった体制で運用しています。90年代から長年投資してきたシステム開発分野が花開いてきて、今では会社の2本柱の一つとしてシステム開発を行ってきています。
しかし、やはりまだまだ売り上げの多くは印刷事業に紐づいているというところがあります。さらに我々が行っているシステム開発の強みのひとつが、印刷の受託産業で培ってきた泥臭いデータ整理などのノウハウから形成されているという側面があります。
我々が一般的なシステム開発専業のSlerと決定的に違う所は、システム開発するだけではなく、お客様の事業内容、データの中身を理解し、お客様の要望に合ったシステムを開発するために、今でも印刷事業のノウハウを有効活用しているところです。
我々が手掛けているシステム開発は一見、見た目が華やかではないものの、本当に製造メーカー様の業務改善になるような実利的で実用的なシステムです。お客様の企業内部の泥臭い悩みごとを改善することが我々のシステム開発の特徴だと感じていますし、上辺の凄さやDX・AIなどのビックワードに踊らされることなく、堅実にお客様目線のシステム開発をするのが重要だと考えています。
河野:そういった開発姿勢が実際にお客様にシステムを導入いただく際の大きな理由となっているということでしょうか?それに加えてもう1点、データ活用の推進と日本のデータへの保守性や知財保護の考え方の狭間でのご苦労などをお聞かせください。
世古:選ばれる理由は、冒頭のお話のとおり、80年代90年代から先進的にコンピュータの活用に取り組んでいたところが大きいと思います。
長年の取り組みの評価をしていただいて、「デジタル総合印刷だったら出来るだろう」と思ってもらい、ファーストコールをいただいたのが当社のシステム開発部門を本格的に立ちあげるための経緯となっています。それ以外の理由としては、今でも多くのお客様がお困りになっているのですが、機械の部品選定を細かにしていくうえで機械の分解図や保守部品の部品リストの作成が簡単なようで難しいという状況があります。実は世界に名だたるグローバルカンパニーでも意外に情報整理がなされていないということがあったりします。
システム会社は、システム作りは得意ですが、分解図を作れるわけではありません。その点、我々は印刷事業で培ってきた、データ整理・データ加工の強みを活かせます。お客様から商品をお預かりして機械をバラしながらイラストを描き起こすなど、お客様の代わりにシステムにインポートするための基礎資料や基礎情報を作れることが選ばれる大きな理由だと思います。このシステムを販売するうえでの難しさは、情報セキュリティもさることながら、システムの需要のある部門の特定が難しいということがあります。
製造メーカー様にとって、商品の開発や販売が事業のコア部分となっており、当社の座標鳥・カタログクリエーターなどがサポートするアフターサービスの領域は必ずしも注目度が高くなく、なかなか投資が行き届かない部分です。お客様内部でも担当部門があやふやになっているため、我々が担当部門や担当者に行きつくのが非常に難しい状況です。
マニュサポ✕デジタル総合印刷
河野:アフターサービス領域へのアプローチは、単なる業務改善ではなく品質向上、企業価値向上につなげていくことが重要になると思うのですがそのあたりはどのようにお考えでしょうか?
世古:まずマニュサポそのものがDXサービス/DXツールというわけでなく、マニュアル情報/設計情報の活用などを通じてDX化を目指す企業様を支援するのがマニュサポの役割であると考えています。
DXに行きつくまでに、「デジタイゼーション」→「デジタライゼーション」→「デジタルトランスフォーメーション」の3ステップあります。まず、マニュサポが「デジタイゼーション」 「デジタライゼーション」を促すことで、その結果として企業様側でDXが生まれる流れを促すことが出来ると考えます。
具体的に当社がマニュサポで行えるDX化の支援としては、今まで人為的に行っていた業務をまずはデジタル化する。その次にWEBシステムやデータベースを活用して仕事のやり方・運用を変革していき、その結果としてDX化を促していくという流れです。例えばこれまで人がやってきたことをシステム化することで品質が上がっていく。あるいは人間が業務を行う場合は、同じ業務をする場合でもAさん、Bさんそれぞれでアプローチ方法が違う、言っていることが違うなど様々な相違点が発生します。それはモノづくりカンパニーにとっては品質のブレに繋がります。
人がやっていたことをデジタル化することで品質の向上はもちろんのこと、結果の均質化が行われることで商品の価値も均質化できると考えています。
河野:マニュサポにおけるアフターサービス分野で、はたしてデジタル総合印刷はどのようなソリューションが提供できるとお考えでしょうか?
世古:少しさきほどの話と逆行しますが、日本のモノづくりは世界的にみても品質が高く、その弊害としてどのメーカーの商品を買っても品質に問題はなく、サービス内容に差も感じられず、ユーザーから見てどれも似たように見えるという<コモディティ化>という現象が進んでいます。
モノづくり企業としては差別化がしづらいということが経営課題の一つとなっていると当社は考えています。もはや商品そのものの品質で他社と圧倒的に差別化する、付加価値化することが困難な市場において、購入後の顧客満足度を高める、ユーザーをファンにしてリピーターを増やすための施策として、商品そのものではないノンコア領域=アフターサービス分野の手厚さは商品価値、企業価値を高める伸びしろだと思います。そこをデジタル総合印刷としてはDXソリューションを提供することで企業のサポートをしていきたいと思っています。
特にアフターサービス領域に特化し、データベースの活用、WEBシステムなどを通じた業務自動化を実現することでお客様のDX化を支援することがマニュサポにおけるデジタル総合印刷の大きな役割だと考えています。