日々の業務のなかで「業務がスムーズに進まない」「無駄な手間がかかっている」と感じることはありませんか?それらを放置しておくと、業務がスムーズに進まないばかりか、仕事の質が安定しなくなったり、会社全体の成長の妨げになったりします。
業務が効率的に行なえていないと普段感じることがあるなら、業務の仕組み化に取り組んでみましょう。本記事では、仕組み化で無駄を省く際に、企業が押さえておくべきポイントをお伝えします。
目次
仕組み化していないことによる問題点
業務が仕組み化されていないと、さまざまな問題が発生します。代表的な問題をみていきましょう。
属人的ではリスクが高い
業務が仕組み化されていない組織の場合、多くの業務が属人的になってしまっていることが少なくありません。属人的とは、業務のやり方や知識が個人に依存していることを指します。
「この問題はAさんに聞かないとわからない」「この業務はBさんでないとできない」ということが当たり前で、AさんやBさんが欠勤・退職した場合、業務が遂行できなくなってしまうのは、知識ややり方が属人化しているからです。
また、やり方や知識が属人化すると、担当者がその業務に着手するかどうかを判断する権力を持ってしまうこともあります。つまり、属人的な組織は「いつ業務がストップしてもおかしくない」というリスクを多分に含んでいると言えるのです。
仕事の品質が安定しない
仕事の品質が安定しないのも、仕組み化を行なっていないことによる問題点です。人は機械ではないので、一定の品質を保って仕事を行なうことができません。どんなにその業務に精通していたとしても、そのときどきの気分や体調の影響をゼロにすることは不可能です。
仕事のやり方や知識が属人化してしまうと、さらに仕事の質は安定しなくなります。仕事の質が一定にならないと顧客の満足度に大きく関わるため、企業の価値を損ねることにもつながりかねません。
業務内容の改善が難しい
仕事のやり方や知識が属人化してしまうと、業務内容の改善が難しくなります。自分が行なっている仕事のよしあしや正誤を客観的に評価できなくなるので、どこに問題があるのか・どうすればもっと効率よく仕事ができるのかが見えにくくなってしまうからです。
仕事の内容や、やり方を仕組み化して社内で広く共有すれば、ほかの人もその仕事ができるようになるだけでなく、客観的な評価が得やすくなり、業務改善の道が見えてきます。
管理が行き届かない
知識ややり方が属人化している組織は、管理が行き届きにくいというデメリットがあります。ほかの人から、その人がやっている業務が見えにくくなるからです。誰が・何をやっているかが見えなくなると、業務によっては不正の温床になることもあります。
「自分以外わからないから、少しぐらい構わないだろう」など、自分の裁量でごまかしや改ざんを行ないやすくなってしまうのです。当然のことながら、不正や改ざん、ごまかしは企業の信頼を大きく損ねます。
会社全体の成長が見込めない
仕事のやり方や知識が属人化している組織の場合、属人化している業務がボトルネックとなって、会社の成長を妨げてしまうのも仕組み化していないデメリットです。
社長やベテラン社員など、特定の人しか対応できない業務が多いと、繁忙期などはその業務の量が担当する人のキャパシティを大きく超えてしまうことがあります。そうなった場合、業務が滞ってしまうのは避けられません。
中小企業や成長企業では、社長やベテラン社員の時間と体力の限界が組織の限界になってしまっていることが多く、業務が仕組み化されていないがために成長の機会を失っている企業が少なくないのです。
仕組み化のメリット
業務を仕組み化すると、業務の効率化が図れるだけでなく、仕事の質が均一になるなどのメリットがあります。主なメリットを詳しく解説します。
業務を効率化できる
仕事を仕組み化するメリットのひとつは、業務を効率化できることです。仕事を仕組み化し、適宜ロボットやコンピューターを導入すれば、より正確に、より早く仕事ができるようになります。
人手不足が叫ばれる今、ロボットやコンピューターを導入することは、人手不足解消にも効果的です。それまで割いていた人手を、より注力したい分野に振り分けられるようになることで、業務の拡大・成長も見込めるでしょう。
考えなくてもできる
仕事を仕組み化することで、あれこれ難しく考えることなく、スムーズに業務ができるようになります。
たとえば、カップラーメンを作る場合、作り方が仕組み化されていなければ、ひとりひとりが試行錯誤しながら作り方を導き出すしかありません。
お湯を入れるのか水を入れるのか、何分待つのか、スープは先に入れるのか後に入れるのかなど、これらをひとつずつ試行錯誤するのは、手間と時間がかかります。
しかし、作り方を仕組み化して、パッケージにそれを記載しておけば、誰でも迷うことなくおいしいカップラーメンが作れるでしょう。
初めてその仕事をする人でも、自分で考えたり、方法を模索したりすることなく、スムーズに仕事に取り掛かれるのは仕組み化の大きなメリットです。
誰でも一定水準の結果が出せる
モチベーションやテンションに左右されず、誰でも一定水準の結果が出せるようになることも仕組み化の大きなメリットです。
人間は機械ではないので、どうしてもその日の気分や体調に左右されます。それは仕事でも同じで、あるときはよくできても、あるときはできがイマイチになるということは、ごく当たり前にあることです。
しかし、仕事を組織化すれば、気分や体調に左右されることなく、誰でも一定水準の結果が出せるようになります。
誰もがいつでも一定水準の結果が出せるようになれば、やり直しをする時間の無駄や、検品にかかる手間を大幅に減らすことができるのは、言うまでもありません。
業務中のミスを減らせる
仕事に多少のミスはつきものですが、仕組み化することでミスを減らし、業務の効率化が図れます。
仮にミスが起きた場合でも、誰が・どこで・どのように・何を行なうのかが仕組み化されていれば、どこでミスが起こったのかも簡単に突き止められるでしょう。
たとえば、製造業の現場で業務を仕組み化すると、誰が・どこで・どのように・何を行なうのかが明確になります。
もし製造ラインで何らかのミスが起きた場合、仕組み化されていればより迅速に、どこでどのようなミスが起きたか突き止め、改善に動けるでしょう。
業務の仕組み化をして、ミスが起きた場合の原因究明と再発防止を繰り返せば、ミスを限りなくゼロに近づけることも不可能ではありません。
会社の資産として残り続ける
一度仕事を仕組み化してしまえば、その仕組みは会社の資産として長く残り続けます。仕組み化しておけば、仮にベテラン社員が退職したとしても、残った従業員あるいは新たに採用した従業員がスムーズにその業務を引き継げるでしょう。
同じ場所で働く人が、知識や手順、認識を共有していれば、誰に質問しても同じ答えが返って来るので、業務が混乱するリスクが減らせるのもメリットです。
新入社員でもその業務をこなすことができるようになれば、ベテラン社員にはさらにスキルが必要な業務を割り振るなど、成長につながる機会を提供できます。
業務を仕組み化することは、社員のスキルアップや効率的な配置が叶えられるだけでなく、人材の成長を通じた企業の発展にも寄与する、かけがえのない資産となるでしょう。
仕組み化のために理解すべき業務タイプ
続いて、仕組み化のために理解すべき業務タイプを解説します。仕組み化をする際は、その業務が次のどのタイプに該当するかを見極めることが大切です。
感覚型
感覚型の業務は、経験や知識に基づく高度な判断力や、技術力が求められる業務を指します。スキルを持った人が行なうことに価値がある業務で、コンピューターが代わって行ったり、マニュアル化したりするのが難しいのが特徴です。
たとえば、職人によるものづくりなどがこれに当たります。感覚型の業務を仕組み化するのは容易ではないため、こういった作業に関しては、仕組み化するよりも人材に経験を積ませて、スキルを習得させていくことが大切です。
単純型
誰が行なっても同じ結果が出せる業務を単純型といい、具体的には単純作業や繰り返し作業を指します。単純型の作業は、コンピューターやロボットなどによる自動化に向いている業務です。
比較的仕組み化しやすい業務なので、適宜機械を導入すれば品質の一定化・業務の高速化が実現できるだけでなく、時間と人をほかの業務に当てられます。
選択型
選択型の業務は、決められたパターンからやることを選択して進めていく業務です。選択方法や選択基準を決めておけば、比較的簡単に仕組み化できます。
業務内容によっては、コンピューターやロボットをプログラムして自動化させることも可能でしょう。
仕組み化のための段階は全部で4つ
続いて、仕組み化するための手順を紹介します。仕組み化は、順を追って行ないましょう。
1.業務の可視化
まず行うべきことは、業務の可視化です。誰が・いつ・何を・どのように行なっているかを可視化して、誰もが認識できるようにしましょう。
業務を可視化する際は、文章や数字などを用いて、関わる人全員が共通の認識を持てるよう工夫することが大切です。
2.業務の標準化
次に、業務の標準化を行います。業務の標準化は、その業務の手順や質を統一して、効率的に業務が行なえるようにすることです。
業務を標準化することで、誰がいつ行っても、迷うことなく同じ質の仕事ができるようになります。
3.業務のマニュアル化
業務の標準化ができたら、それを元にマニュアルを作成しましょう。マニュアル化することで、知識や手順を共有することができます。
マニュアル化する際は、文章だけで表そうとせず、適宜数字や図を用いるなどして理解しやすく工夫することが大切です。
4.業務のツール化
業務の仕組み化で最後にすべきことは、業務のツール化です。もし業務のなかに自動化できるものがあれば、適宜コンピューターやプログラムなどを導入してツール化しましょう。
業務をツール化すれば、誰もが同じ質の仕事をよりスムーズにできるようになります。
仕組み化にはマニュアルが重要
業務を仕組み化は、マニュアルの質が成否を分けると言っても過言ではありません。マニュアルはただ作ればよいというものではなく、業務の仕組み化に必要なことをすべて盛り込んでいて、なおかつわかりやすいものであることが重要です。
一読しただけでは理解できない、わかりにくいマニュアルは、結局誰かに質問しなければ業務を進めることができません。それでは、いつまで経っても業務が仕組み化されず、属人的なままです。
マニュアルを作る際は、それを読めば誰でも正しくスムーズに業務ができる、わかりやすいマニュアルを作りましょう。わかりやすいマニュアルを作るのは簡単なことではないので、必要に応じて外注も検討してください。
自社内で作成する場合、マニュアル作成に有用なツールの使用がよいでしょう。専用ツールを用いれば、通常は非常に困難なマニュアル作成作業も容易になります。
こちらのページでは、効率的なマニュアル作成に役立つ「マニュサポ」をご紹介します。
仕組み化にマニュアルがおすすめの理由
最後に、仕組み化にマニュアル化をおすすめする4つの理由を解説します。業務の仕組み化をする際にマニュアルを作成するメリットは次のとおりです。
誰でも理解できるため
マニュアルを用意すると、誰でもその業務の手順や目的が理解できるようになります。なんのためにその業務を行うのか・どのように行うのかが明確になっていれば、ベテラン社員でも新入社員でもスムーズにその業務の役割を理解できるでしょう。
そのためにも、マニュアルはわかりやすくなければいけません。専門用語などの使用は最小限に留め、初めてそのマニュアルを読む人も理解できる内容を目指すことが重要です。
誰でも同じ品質に仕上げられるため
マニュアルを作ることで、何を・どのように行うかがはっきりするのもマニュアル作成をおすすめする理由です。
業務の手順を明確にマニュアル化すれば、誰でもそれに従って作業するだけで、一定の質を保って業務が遂行できます。
仕事の質を一定に保つには、センスや個人の感覚といったあいまいな指示を盛り込まずに、マニュアルを作成しましょう。
何を・どのタイミングで・どのように行うかをはっきりマニュアルに記載しておくことで、個人の感覚に依らない質の高い仕事が可能になります。
セルフチェックできるため
手元あるいはいつでも見直せる場所にマニュアルがあることで、折に付け自分の仕事手順や仕上がりの質をチェックできるのもマニュアルを作成するメリットです。
セルフチェックができないと、何かにつけ上司にチェックをしてもらう必要があり、時間も手間もかかります。ある程度セルフチェックできるようになれば、上司にチェックしてもらうための時間が短縮できるだけでなく、上司の手間も省けるでしょう。
もちろん、セルフチェックだけで仕事を完了させることはおすすめしません。必要に応じて、他人の目を通じて客観的に手順や質をチェックすることは、質の高い仕事を続けていくために必要なことです。
しかし、マニュアルを作成してチェック項目やその手順を明確化すれば、より短時間で手早くチェックできるようになるため、作業する側・チェックする側双方にメリットがあります。
説明の手間を省けるため
普段自分が行なっていることの手順や目的を人に説明するというのは、簡単なことではありません。相手が理解できるように説明するとなると、苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。
人に説明するために自分の作業の手を止めて、仕事が思うように進まないことが、ストレスになっている人もいるでしょう。
業務を仕組み化してマニュアルを作ると、新しくその業務を担当することになった人に逐一手を止めて説明する手間が省けます。
説明を受ける側もマニュアルがあれば安心です。もちろんマニュアルを読んでもわからないことは質問しなければなりませんが、マニュアルがあれば解決の糸口を探すことができます。
人によって言うことが違う・特定の人でないと答えてもらえないといったことが防げるのも、マニュアル作成をおすすめする理由です。
まとめ
「誰かに聞かないとわからない」「特定の人でないと作業ができない」という状況は、効率的とは言えません。業務の効率化を目指すのであれば、まずは業務の仕組み化を行ないましょう。
それまで属人的だった知識や、やり方・手順を可視化して全員で共有すれば、スムーズに業務が進められるようになります。
業務には、仕組み化できる・仕組み化しやすい業務と、仕組み化が難しい業務があります。業務の仕組み化をする際は、その業務が感覚型・単純型・選択型のどれに当てはまるか見極めることが大切です。
また、業務の仕組み化にはマニュアルの作成が欠かせません。読んだ誰もが理解できるマニュアルを作ることで、より業務の効率化が図れるだけでなく、仕事の質も一定に保つことができます。
自社でわかりやすいマニュアルを作るのが難しい場合は、外注を検討するなどして、わかりやすいマニュアル作りに努めることが、業務の仕組み化の結果を左右すると言っても過言ではありません。ぜひこの機会に業務を仕組み化して、無駄を省きましょう。