我々がサービス展開しているマニュサポ(Manufacturing Supporter)は、3つの印刷会社から成り立っています。3社それぞれが長くマニュアルに携わってきた歴史がありますが、各社が持つ特徴や強みは異なっています。
今回取り上げるのは、日興美術株式会社について。真生印刷が聞き手となり、日興美術の特徴についてご紹介していきます。
日興美術株式会社 営業 鈴木 ✕ 真生印刷株式会社 営業 北中
静岡という立地で培った確かな技術力
北中:それでははじめに日興美術について簡単にお聞かせ願います。
鈴木:日興美術は1946年に設立され、静岡に拠点を置く印刷会社となります。
主にメーカー様向けの取扱説明書などの技術資料やカタログなどの販売促進資料の制作から印刷・納品までの一気通貫体制にて事業を展開してきております。企画・デザイン・レイアウト見直し改善といったところから原稿作成、テクニカルイラストの作成、自動組版も含めたレイアウト作業を得意としています。
北中:メーカー様向けとのことですが、どういったジャンルを取り扱われているのでしょうか?
鈴木:静岡は浜松を中心にオートバイと楽器の街と呼ばれています。我々のお得意先様もオートバイメーカー様や楽器メーカー様などがございます。
また、東京・埼玉にも拠点があり、そちらでは大手カメラメーカー様や、自転車メーカー様がお得意先様です。
北中:そういったお得意先様とお取引される中では、どういったところが日興美術の強みでしょうか?
鈴木:我々のテクニカルライティング部門は整備士資格を取得している人材が所属しています。
また、テクニカルコミュニケーション協会で検定資格を取得している人材がお客様の図面や仕様書の内容確認、実際の試作機や製品を借用しての原稿作成・テクニカルライティングを実施することが可能です。
北中:ということは実際に会社内で整備士の免許を持った方々が作業をされるスペースなども完備されているということでしょうか?
鈴木:取材スタジオや作業工具なども一式そろえて作業環境を整えています。
北中:具体的にテクニカルイラストなどのキーワードも出てきましたが、イラスト・アニメーションなども得意とされているのでしょうか?
鈴木:お客様からCAD図面データを借用し、マニュアルの中で使用するテクニカルイラストやアニメーション動画への展開なども行っております。一つのデータから様々な形に展開するという。まさにワンソースマルチユース的な使い方を実践しています。
北中:大手メーカー様とのお取引がある中で、海外向けの制作物などもあるかと思います。翻訳なども一つのポイントになるかと思いますがそのあたりはいかがでしょうか?
鈴木:日本語からの英語翻訳、英語をベースにしたヨーロッパ言語やアジア言語への展開などほとんどの言語翻訳を行っています。翻訳支援ソフトの用語集を構築・活用しながら翻訳作業を行っています。
翻訳支援ソフトを使えば、新しい文章が出来た場合、以前に翻訳した近しい内容があればその情報を流用しながら翻訳を行うことができます。そのため、過去の資産を活かしながら新しい翻訳を行い、さらに新しいメモリーを構築していくサイクルが実現できます。
言い回しの統一や、翻訳の品質の統一も行ったうえでコスト的なメリットも出せるような体制になっております。翻訳支援ソフトはこれまで何十年と活用してきた実績がありますので、かなりの情報蓄積がなされています。製品カテゴリーによってメモリーを分けながら翻訳を行っています。
北中:実際にそういった取り組みはお客様からの評価頂いている部分なのでしょうか?
鈴木:メーカー様としても取扱説明書は製品を構成する『部品の一部』という位置づけですので、部品単価が上がればそれだけ製品の単価に反映させる必要があります。すなわちコストは非常に厳しく管理されています。
そういった面でも商品のコストダウンという所を目指しながら、制作費用のコストダウンも取り組んでいます。
北中:コスト面も然りですが、品質についての要求水準も高いという面があると思います。真生印刷もメーカー様との取引のなかで部品の供給責任を意識する部分は非常に強いのですが、印刷物自体の品質や納期に対するパフォーマンスに対して日興美術の意識や体制はどういったものでしょうか?
鈴木:納品が間に合わず生産ラインがストップするということは一大事となりますので、納期も含めて品質などはお客様からもご指導を頂きながら改善活動を進めてきた経緯があります。お客様と一緒に品質管理体制を構築し、お客様にご指導いただきながら品質向上を図ってきた部分が大きいです。そういった意味でも一般的な制作会社・印刷会社とは異なり、メーカー様の品質基準を社員が十分に理解しながら業務にあたっているのではないかと考えています。図面、仕様書や試作機など機密情報を扱っていますので細心の注意を払っています。
北中:本社工場含め、何カ所か拠点があると思うのですが、その中でも特徴のある拠点はありますか?
鈴木:拠点のなかでもDPX岡部は、少部数の印刷から特殊印刷が可能なオンデマント印刷を所有しており、お客様のニーズに合わせて生産対応ができる体制を取っています。在庫保管をしながら多種多様な印刷物のキッティング(袋詰め)作業もできる体制を整え、お客様のご発注に合わせながらの納品が可能です。DPX岡部はショールームを常設しておりまして、我々の成果物をご見学していただけるようになっています。環境配慮をテーマにした地域貢献の活動も実施しておりますので、そういった活動を見ていただける展示物も用意しています。
北中:ショールームを常設されているとのことですが、印刷会社としては非常に珍しいですね。環境に配慮した活動とは具体的にどういったことでしょうか?
鈴木:印刷会社ですと、FSC認証紙や大豆インキの使用というものが一般的かと思いますが、石灰石からできているLIMEXという素材を使った環境に配慮した印刷物の対応を行っています。SDGs活動にも取り組んでおり、静岡市ともコラボレーションしながら環境イベントなどへも参加しております。
マニュサポ✕日興美術
北中:マニュサポ3社が集まってそれぞれの強みを活かしながら活動しておりますが、マニュサポ3社で取り組むメリットはどういったところにあると感じていますか?
鈴木:マニュサポ3社それぞれ大手メーカー様とのお取引があり、培ってきたノウハウや知識を存分に活用して共創していけると思っています。
ユーザー様を第一に考え、製品・商品の購入検討段階からご購入・ご使用開始・使い込み・困った時や故障破損による修理、廃棄・新たな新商品ご購入までの一連のカスタマージャーニーを考えることが重要と感じています。そのサイクルのなかで、我々マニュサポはエンドユーザーとメーカーの中間的な役割を担っていけるのではないかと感じています。
マニュサポ3社の実績を合わせると家電製品から輸送機、さらには大型の産業機器などの製品カテゴリーを扱ってきています。そこまで網羅する制作会社というのも非常に珍しいのではないでしょうか。マニュサポ3社それぞれが特徴を持ってやってきたからこそ、幅広いサービスが提供できるのではないかと思っています。
北中:グループ会社内のネットワークを繋げるという意味でもマニュサポという活動は非常に意味があるものだと思うのですが、日興美術としてそういった活動にどういった期待をされていますか?
鈴木:日興美術、真生印刷、デジタル総合印刷の3社はタイヘイグループの印刷事業部に属しています。そういった意味ではグループとして元々強いネットワークがあるのですが、マニュサポでは前段階である制作の部分や、アフターサービスの領域を通して日本の製造業をサポートしていきたいと考えています。
最終的にはお客様へのコンサルティングという展開を目指して、お客様の抱える課題解決やDX化に向けた新たなご提案をしていきたいと考えています。