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DX推進の減税に活用できる!投資促進税制の内容と適用までの流れ

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DX導入が節税になると聞いたことはありませんか?DX投資促進税制という優遇措置があり、適用を受ける際には、書類の提出や認定要件をクリアしなければなりません。

本記事では、投資促進税制の内容と適用までの流れについて、詳しく解説していきます。DX推進で減税をしていきたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

DX投資促進税制とは

DX投資促進税制は、企業のDX推進を図るために用意されたDXへの投資で受けられる減税措置です。

たとえば、DXに必要であるクラウド技術を活用したデジタル関連投資については、税額控除または特別償却を行うものです。企業がデジタル技術を活用していくために、ソフトウェアやハードウェアも対象になっています。

投資促進税制が対象となるのは、会社全体でDXに取り組む事業者です。また、企業がDXに取り組む場合には、デジタル技術・設備の導入が必要です。政府は企業の費用負担を減らすために、DX投資促進税制という優遇措置を取り入れています。

DXとはAIなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善やビジネスモデル変革を行い、競争力を向上させることです。

DX投資促進税制の内容

DX投資促進税制の優遇措置は、中小企業でも大企業でも要件を満たせば受けられます。ここでは、下記について解説します。

・ 対象事業者
・ 対象資産
・ 優遇措置
・ 適用金額
・ 適用期間

対象事業者

DX投資促進税制の適用対象となるのは、下記の法人です。

・ 青色申告書を提出する法人
・ 産業競争力強化法にもとづく事業適応計画の認定事業者

経済産業大臣に事業適応計画を提出して、認定を受けた企業で青色申告をしていなければ、適用を受けられません。

また、部署・拠点単位でのDXは適用対象外であるため注意が必要です。デジタル要件と企業変革要件を満たしたうえで事業適応計画を作成し、経済産業大臣の認定を受けてから設備の導入を行いましょう。

対象資産

DX投資促進税制の対象となる資産は、下記の4つに分類されるものです。

・ ソフトウェア
・ 繰延資産
・ 機械や装置
・ 器具や備品

ソフトウェアは、取得・製作のどちらでも対象です。繰延資産は、クラウドシステムへの移行にかかる初期費用として考えられています。DX投資促進税制を適用する設備に関しては、機械や装置・器具や備品はソフトウェアと連携して使用するものに限定されます。

試験研究・ソフトウェア業・インターネット付随サービス業の事業のために使うもの、国内事業のために使わないものは対象外です。

優遇措置

税額控除と特別償却という2つの優遇措置があり、どちらかを選択できます。

税額控除は、課税所得金額に所得税の税率を乗じて算出した所得税額から一定金額を控除します。事業用の投資に対しては原則3%になっていますが、自社以外の法人とデータの連携や共有を行うと5%の控除が可能です。

ただ、税額控除には控除上限があります。カーボンニュートラル投資促進税制と合算して、法人税額の20%までです。

特別償却は、一般的な減価償却費とは別で経費の追加計上が可能です。投資額の30%まで経費計上ができます。

適用金額

DX投資促進税制には、適用金額の上限と下限が設定されています。適用金額は下記の通りです。投資する金額の上限は、300億円となっていて、300億円を上回る投資については300億円までが対象です。投資する金額の下限は、投資額が国内売上高に対して0.1%以上になります。

たとえば、売上高が10億円であれば100万円以上の投資金額が必要です。税額控除の上限はカーボンニュートラル投資促進税制と合わせて、当期法人税額の20%までです。

適用期間

DX投資促進税制の適用期間は、2021年8月2日から2023年3月31日までの時限措置でしたが、2025年3月31日まで2年間延長されています。期間を延長するだけでなく、適用となる要件も改正されるため、DX投資促進税制の概要を確認しておくとよいです。

適用期間内に、事業適応計画の認定を受けて資産を事業で利用する必要があります。計画書などの書類を提出するのみでは認められないので注意しましょう。

DX投資促進税制の認定要件

DX投資促進税制の適用を受けるには、デジタル要件・企業変革要件の2つを満たす必要があります。

また、事業適応計画に関してもデジタル要件と企業変革要件を満たして、経済産業大臣の認定を受けるのが必須です。DX投資促進税制の認定要件について、詳しく解説します。

デジタル要件(D要件)

デジタル要件は、下記の3つの要件を満たす必要があります。

・ 既存の内部データと、自社以外の外部データを合わせて連携させる
・ クラウド技術に基づいてデータの連携・活用の仕組みを構築する
・ 情報処理推進機構の審査を受けてDX認定を取得する

一番大切なのは、情報処理推進機構からDX認定を受けることです。DX認定制度は、DXに関して優良な取り組みを行なっている企業として認定する制度です。DX認定の対象はすべての事業者であり、中小企業、個人事業主も申請できます。

情報処理技術を活用する方向性、体制や設備など6つの項目を審査して、一定のレベルに到達していれば認定を受けられます。DX認定を受けたうえで、データ連携とクラウド技術の活用を踏まえた事業適応計画になっているかが重要になるでしょう。

企業変革要件(X要件)

企業変革要件では、下記の2つの要件を満たす必要があります。

・ 会社の意思決定にもとづいて決定されている
・ 一定以上の生産性向上・売上高の上昇が見込まれる

会社の意思決定、すなわち取締役会等の決議に基づいている必要があります。また、一定以上の生産性向上・売上高の上昇が見込まれているかの判定要件は、ROAが2014年~2018年平均を基準値として1.5%ポイント向上をクリアしなくてはなりません。

大事なポイントは、部門や拠点などの一部ではなく、会社全体でのDX推進に取り組むということです。企業によっては、IT部門と現場が連動できていないため、デジタル技術が共有されていないケースが多いです。

作業する側と運営する側が一体となって、デジタル化に取り組むことを促進する狙いがあるといえます。

DX投資促進税制の適用までの流れ

DX投資促進税制の適用を受けるには、会社全体でDXに取り組む必要があります。ここでは、下記の内容を解説します。

・ 税制の内容確認
・ DX認定の取得
・ 事業適応計画の作成と申請
・ 投資資産の取得
・ 優遇措置の適用
・ 実施状況報告書の提出

税制の内容確認

まず、DX投資促進税制の要件を満たしているか、所轄の省庁に事前相談で確認するとよいです。DX認定に必要な申請書と資料を作成して、情報処理推進機構に申請が必要です。提出された書類に基づいて審査が行われ、審査に通るとDX認定を受けられます。

適用要件を満たすためにはどうすべきなのか、自社の現状や課題を把握し、どのようなDXに取り組むかを検討しましょう。

DX認定の取得

DX投資促進税制を利用する際には、DX認定の取得を行う必要があり、申請してから認定までに1か月以上かかります。DX認定は情報処理推進機構が実施し、会社の規模を問わずすべての事業者が対象です。

DX認定の条件は「デジタルガバナンス・コード」と呼ばれる基準を満たす必要があります。DX認定は、下記の4分野6項目により審査されます。

・ 経営ビジョン・ビジネスモデル
・ 戦略(組織づくり・デジタル技術活用環境の整備)
・ 成果と重要な成果指標
・ ガバナンスシステム

デジタルガバナンス・コードは、経済産業省が企業のDXへの取り組みを促し、経営者に必要とされる企業価値向上に向けて行うべき事柄をまとめたものです。

申請は、情報処理推進機構のWeb申請システム「DX推進ポータル」で受け付けており、必要書類もDX推進ポータルにて提出できます。

事業適応計画の作成と申請

情報処理推進機構のDX認定を取得した後は、事業適応計画を作成して、経済産業大臣の承認を得る流れになります。DX投資促進税制を利用する際には、事業適応計画を作成して、事業を所管する省庁に提出します。事業適応計画には、下記の3点を記載しましょう。

・ 事業適応の目標
・ 事業適応の内容・実施時期
・ 投資の内容

ほかには、情報技術事業適応に係る確認申請書を提出する必要があり、所定の様式があります。

投資資産の取得

事業適応計画の承認を受けた後は、認定された事業適応計画に基づいてソフトウェアなどを導入し、運用をします。

取得のタイミングは、ソフトウェアや機械などの所有権を得たことを指します。たとえば、検収が終了していない設備に関しては、引き渡しが済んでいないので未取得の状態です。判断に迷われる場合は、所轄の税務署に相談する必要があるでしょう。

優遇措置の適用

適用事業年度が終了したら、税額控除か特別償却を適用して税務申告を行いましょう。税額控除(3%・5%)、特別償却(30%)のいずれかを適用できます。税務申告には、下記の書類が必要です。

・ 申請書の写し
・ 認定書の写し
・ 確認書の写し

どの種類の減価償却資産に該当するか判断が難しい場合は、所轄の税務署へ相談するとよいでしょう。

実施状況報告書の提出

事業適応計画の実施状況や目標の達成・未達は定期報告するとともに、内容を公表しなければいけません。

事業適応計画の実施状況は、所定の様式に従って報告をします。報告書提出時期は適用事業年度の終了から3か月以内で、その際に実施状況報告書を提出する必要があります。

DX投資促進税制以外の優遇措置制度

DX投資促進税制以外の優遇措置制度では、下記の内容を解説します。

・ IT導入補助金
・ ものづくり補助金
・ 繰越欠損金の控除上限の特例
・ 研究開発税制

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社のニーズに合ったITツールを導入する時に利用できる補助金です。対象となるのは、事務局より認定を受けたITツールのみであり、ITツールを登録したIT導入支援業者と一緒に申請する必要があります。

IT導入補助金には、対象費用により下記の4つの枠があります。

・ 通常枠
・ セキュリティ対策推進枠
・ デジタル化基盤導入類型
・ 複数社連携IT導入類型

中小企業でのDX推進に欠かせないポイントについて、あわせてお読みください。

ものづくり補助金

「ものづくり補助金」とは、事業者が取り組むサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などをサポートする施策です。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施していて、利用する際にはインターネットを通じて電子申請を行えます。

繰越欠損金の控除上限の特例

コロナ禍の影響もあり、DX推進を含めた経営改革に取り組む企業を対象に繰越欠損金の控除上限の特例が設けられています。

繰越欠損金控除上限は中小企業が100%、大企業は50%でしたが、特例の対象となる一定の欠損金は、大企業も最大100%まで引き上げられています。繰越欠損金の控除上限の特例を受けるには、下記の流れになります。

・ 事業適応計画の認定が必要
・ 事業再構築・必要となる投資内容を事業適応計画に盛り込む
・ 事業所管大臣に事業適応計画を提出し、認定を受けて適用

研究開発税制

「研究開発税制」は、民間企業が研究開発を行う場合に試験研究費の額に税額控除割合を乗じた金額を控除できる制度です。

従来は機械工学・自然科学の分野において基礎研究から応用、開発などが対象とされていたため、ソフトウェア開発はパッケージソフトだけが対象でした。しかし今では、クラウドを通じてサービス提供を行うソフトウェアに関する研究開発も支援対象に追加されています。

まとめ

本記事では、投資促進税制の内容と適用までの流れについて解説しました。デジタル投資や企業変革のための取り組みを行い、事業適応計画が認定されればDX投資促進税制による税金面の優遇が受けられます。

DXを取り入れて生産性が高まる環境にする際に、費用面で懸念していた企業にとっては喜ばしい制度です。

所定の要件を満たして、DX推進に投資する企業は税額控除(3%・5%)、特別償却(30%)のどちらかを受けられます。DX投資促進税制は、DX認定取得や事業適応計画の作成の準備に時間がかかります。

また、会社全体でDXへ取り組む必要があるので、DX投資促進税制を活用したい方には早めの行動をおすすめします。