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売ってからが始まり!DX時代に重要なアフターサービスについて解説

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顧客満足度を高めるには、製品をただ販売するだけでなく、アフターサービスも重要な要素でしょう。とくにDX時代では、顧客ニーズや環境の変化が激しくなり、アフターサービスの重要性は一層高まっています。

本記事では、DX時代におけるアフターサービスの重要性や、取り組み方、アフターサービスの課題解決に効果的な方法などについてまとめています。

売り切り型のビジネスモデルは限界

従来は、製品を販売したらアフターサービスは終了するという、売り切り型のビジネスモデルが一般的でした。

しかし、これでは顧客との長期的な関係性の構築ができず、市場競争力の低下に繋がるという問題点があります。次の項目で詳しく解説していきましょう。

これまでのアフターサービスは受動的

これまでのアフターサービスは受け身で、製品に問題が発生して顧客から問い合わせがあった際は、修理や交換などの対応を都度行うことが一般的でした。

メーカーとエンドユーザーの間に、流通業者や代理店が介在することが多く、問題が発生してから対応するために、時間やコストがかかっていました。

また、流通業者や代理店が提供するアフターサービスの質や、スピードにもばらつきがあるため、エンドユーザーは不満を抱くこともありました。

これからのアフターサービスは能動的

対して、これから求められるのは、能動的なアフターサービスです。従来の受動的なアフターサービスとは異なり、製品のトラブルが発生する前に、エンドユーザーのニーズや要望を把握し、よりよい製品やサービスの提供を目的としたアプローチになります。

能動的なアフターサービスを実現するためには、DX化が非常に有効です。DX化により、製品の運用状況やエンドユーザーのニーズを正確に把握しやすくなり、それに基づいた効率的なアフターサービスの提供が可能になります。

さらにDX化によって、アフターサービスを提供するためのさまざまなコストカットを実現可能です。たとえば、遠隔で問題を解決することができる場合、現地にサービス担当者を派遣する必要がなくなります。

こうした能動的なアフターサービスを提供するために、今やDX化は不可欠ともいえるでしょう。

アフターサービスDXに求められる“守り”と“攻め”

アフターサービスDXには、“守り”と“攻め”の異なる手法があります。その違いを解説していきます。

守りのDXとは

守りのDXは、従来の業務をより効率化し、ビジネスの安定性を確保するためのアプローチです。具体的には、以下のようなことが含まれます。

・セキュリティ対策の強化
・個人情報や知的財産などの情報資産の適切な取り扱い
・法令や業界ルールに沿った運用の確立
・システム障害や情報漏洩などのリスクへの対応

これらの取り組みを通じて、企業はデジタル技術を活用しながらリスクを抑え、信頼性の高いサービスを提供することができます。

守りのDXを実行し、DX時代のなかで発生するリスクをマネジメントすることで、企業の安定経営につながるでしょう。中小企業の場合、まずは守りのDXから取り組むことが重要とされています。

なお、守りのDXの考え方は、経産省のデジタルガバナンス・コード2.0における「リスクマネジメント」という要素と関連しています。

デジタルガバナンス・コード2.0は、企業がデジタル化に取り組む上でのガイドラインを示したものであり、守りのDXの観点からも有用な情報が含まれています。

攻めのDXとは

攻めのDXは、既存の枠組みにとらわれず、ステークホルダーのニーズやトレンドを掴み、新しいビジネスチャンスを創出することに重点が置かれます。

守りのDXと攻めのDXは、取り組みの目的や内容において異なる部分があるため、整理しておきましょう。

・守りのDX:従来の業務プロセスやサービスをより効率的に改善することで、業務の安定性やコスト削減などの実現を目指す

・攻めのDX:新しい価値創造のために、業務プロセスやサービスを大胆に変革することで、新たなビジネスモデルや市場の創造を目指す

攻めのDXは、以下のような取り組みが考えられます。

・IoT技術の活用:自社製品にIoT技術を組み込み、遠隔監視・制御や保守点検のサービスを提供

・AI技術の導入:IoTデータをもとに予知保全を行い、設備の故障を検知して生産性を向上

・クラウドサービスの活用:業務効率化のため、生産管理システムや在庫管理システムをクラウド上で運用

・VR技術の活用:製品の設計や製造プロセスの可視化にVR技術を活用し、問題点を早期に発見・修正

これらにより、競合他社との差別化を図り、新規顧客の獲得や収益増加などが期待できます。ただし、攻めのDXはリスクをともなう取り組みであり、失敗する可能性も念頭に置いておく必要があります。

“守りのDX”と“攻めのDX”企業の取り組み状況・成果状況

では日本の中小企業は、DXにおいて「守りのDX」と「攻めのDX」どちらを優先的に取り組んでいるのか、NTTデータ経営研究所のデータを元に分析しました。ここでは、取り組み状況と成果状況に分けて述べています。

テーマ別|取り組み状況

DX取り組み企業は、どのようなテーマのDXに取り組んでいるか調査したところ、業務処理の効率化・省力化が84.0%、業務プロセスの抜本的な改革・再設計が61.1%であり、どちらも“守りのDX”でした。

業務プロセスの効率化や省力化、また業務プロセスの抜本的な改革・再設計など、守りのDXが優位に進んでいる状況が見て取れます。

いっぽうで攻めのDXとして、新たなビジネスモデルの開発・展開や顧客体験の向上に取り組んでいる企業はまだ少なく、その比率は相対的に低い状況にあります。

テーマ別|成果状況

また、同調査において各テーマ別の成果の状況を調べたところ、業務処理の効率化・省力化が40.5%とトップで、次に、業務プロセスの抜本的な改革・再設計が22.7%でした。

ちなみに、上記以外でのテーマにおいては、成果が出ているとの回答の比率は20%以下であり、やはり守りのDXが成果を上げている状況が伺えます。

ただし、この結果には、攻めのDXに取り組んでいる企業がまだ少ないことも影響している可能性があります。企業が攻めのDXに取り組み、その成果が現れるには一定の時間がかかることも十分考慮する必要があるでしょう。

“守りのDX”と“攻めのDX”どちらから取り組むべきか

どちらから取り組むべきかについては、まず自社の状況や目標に合わせて判断する必要があります。

守りのDXは、業務プロセスの改善によってコスト削減や生産性の向上などにつながるため、すでにある業務を改善することで、安定した経営基盤を築くことができます。

いっぽう、攻めのDXは、新しいビジネスモデルの創出で市場競争力を高めることができるため、将来的な成長戦略を考えるうえでは重要な要素となります。

DXの手段であるIT投資にも“守り”と“攻め”がある

DXを実現するためには、IT投資が欠かせません。しかし、IT投資にも守りと攻めの2つの視点があります。以下、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

守りのIT投資とは

守りのIT投資とは、既存のシステムやプロセスを改善して、リスクを軽減するための投資です。

セキュリティ対策や災害対策の強化、データのバックアップや復旧、既存のシステムの更新や改善などが挙げられます。これらの投資は、企業の業務継続性を確保し、リスク回避に役立ちます。具体的なIT投資をいくつか紹介しましょう。

・定期的なシステムの更新
セキュリティ対策や不具合の修正、機能追加などを行うことで、システムの安定性を維持することができます。

・未IT化業務プロセスのIT化
IT化が進んでいない業務プロセスを自動化することで、業務効率の向上が期待できます。

たとえば、手作業で行われていた書類管理をITで自動化すると、情報の共有や検索が容易になり、業務時間の削減につながります。

・法規制対応
法律や規制の変更に対応するために、システムの改修やデータの保管方法の見直しが必要となります。その際にITを活用することで、法規制に適合したシステムを構築し、適切なデータ管理を行うことができます。

注意点として、守りのIT投資は安定した経営につながりますが、効果が直接的に現れるまでに時間がかかることがあります。また、追加投資が必要になる場合もあるため、コスト効果を見極めて、長期的な視点で計画的に投資することが重要です。

攻めのIT投資とは

攻めのIT投資とは、新しいテクノロジーやビジネスモデルを取り入れて、新たな市場やビジネスチャンスを創造するための投資です。電子情報技術産業協会の国内企業の「IT 経営」に関する調査によると、以下が紹介されています。

・ITによる製品・サービスの開発強化
開発プロセスをIT化して、製品・サービスの開発期間を短縮し、製品・サービスの品質向上につなげる

・ITによる顧客行動・市場分析の強化
ビッグデータやAIを活用して、顧客行動や市場動向を把握することで、市場の変化に迅速に対応する

攻めのIT投資は、将来的な成長戦略につながりますが、リスクが高く、予測がつきにくいことがあります。

加えて、ビジネスモデルや技術が急速に進化するなかで、先行投資が無駄になることも視野にいれなければなりません。ビジネス戦略と緊密に連携し、素早く柔軟に市場変化に対応できる組織体制が求められます。

DXで成功する企業と成功しない企業の違い

製造業だけでなく、どの分野・業種でもDXは今や避けて通れないテーマです。しかし、DXに取り組んでも成功できる企業と、そうでない企業があります。この項目では、DXで成功する企業と、成功しない企業の特徴について解説します。

成功する企業の特徴

成功するDXの実現には、経営層がDXの重要性を理解し、積極的に取り組むことが必要です。

経営層が企業の方針を全社員に共有するとともに、単一の部門や役割だけでなく、組織全体で取り組まなくてはならないでしょう。成功するDXを進める企業では、部門間やチーム間での情報共有や協力が活発に行われており、DXに必要な文化やスキルが浸透しています。

また、データを収集・分析・活用に長けている企業は、それを基にした意思決定を行うことができるため、業務の改善や新たなビジネスチャンスを発見することができます。

成功しない企業の特徴

DXが成功しない企業は、以下のような特徴があります。

・ユーザー中心でない
ユーザー中心のアプローチが欠けている企業では、DXを導入してもユーザーにとって使い勝手が悪かったり、必要な機能が不足していたりすることがあります。

・スキル不足
DXを実現するためには、さまざまなシーンで適切なスキルが必要です。専門知識を持つ人材を採用できない、新しい技術やプロセスの導入に消極的になるなど、さまざまな弊害があります。

・プロジェクトマネジメントが不十分
DXプロジェクトは、複雑で多岐にわたるため、プロジェクトマネジメントが不十分だと失敗することがあります。

プロジェクトマネージャーが適切な計画や予算を立てず、プロジェクトの進捗管理や調整ができなかったり、チーム内でコミュニケーションが不十分であったりすると、DXの成功は望めません。

アフターサービスの課題解決に効果的な方法

この項目では、製造業におけるアフターサービスを効率化する方法として、以下の4つの方法を紹介します。

FAQを充実させる

FAQとは、よくある質問とその答えを集めた項目です。この項目を充実させることで、同じ質問に対する回答を繰り返す手間を省き、効率的に顧客対応を行うことができます。

たとえば、自社のWebサイトにFAQを掲載することで、顧客の問い合わせやトラブルの解決につながります。そのほか、SNSやメールマガジン、アプリなどでもFAQを配信することができます。製品情報の電子マニュアルとリンクさせるのもよいでしょう。

電子マニュアルなど、ドキュメント管理ツールについてはこちらでも紹介しています。

チャットボットを導入する

チャットボットは、人工知能や自然言語処理技術を利用して、コンピュータープログラムによって自動応答や対話を行うプログラムのことです。

ウェブサイトやアプリケーションのなかで、顧客の質問や要望に対して自動応答を行うことが可能で、あらかじめ用意されたテキストや音声で質問や要望を認識し、適切な回答を返します。

24時間いつでも自動応答ができるので、顧客からの問い合わせ対応がスムーズになり、オーナーの負担の軽減につながります。

CRMを導入する

顧客との関係性を強化してニーズを掴みたい場合は、CRM(顧客関係管理)システムの導入を検討してみましょう。

顧客情報の蓄積や分析により、顧客のニーズを把握し、よりよいサービスや製品を提供することができます。

また、営業やマーケティング、カスタマーサポートなど、顧客に関わるさまざまな業務プロセスを効率化することもできます。

一元管理システムを導入する

保証期間や修理履歴などの情報を一元管理するシステムを導入することで、顧客の信頼性を高めることができます。

名前、連絡先、注文履歴、アフターサービスの履歴などの情報を一元的に管理することができるため、顧客情報の取り違いや重複を防ぐことができます。

また、一元管理システムは、企業内の複数のシステムやデータを集約して管理することを目的としているので、業務プロセスの効率化や情報の正確性向上にも役立ちます。

たとえば、生産管理システムや在庫管理システム、人事・給与管理システムなど、企業内で使用されるさまざまなシステムやデータを統合し、一元的に管理することができます。

まとめ

DX時代において、アフターサービスは顧客満足度を高めるために非常に重要な役割を担っています。

製品が販売される前から、アフターサービスの提供方法を考えることが必要であり、販売された後には、適切なサポートを提供することで、再購入率や口コミ効果の向上に繋がります。

いっぽうで、効率化や収益化などの課題があります。課題解決のためには、FAQやCRM、問い合わせ管理システムなどのDXソリューションを導入し、成果が出るまで長期的な目線で取り組むことです。

また、闇雲に取り入れるのではなく、まずは自社にとってどのようなソリューションが必要かを洗い出し、アフターサービスの課題解決へとつなぎましょう。